marsroverとそれに関わる人と
もはや全然タイムリーじゃないですけど、自分でエントリーを起こしたので、フォローアップを。
ここでは朝日新聞の報道を貼っておこう。
もちろん本家のNASAのJPL (Jet Propulsion Laboratory)のページにあるニュースリリースもどうぞ。
実は「きわめて重大な発表を行う」と報道されていたので、一瞬アミノ酸でも見つかったならすごいと考えたが、それはないとすぐに思い直した。今回は生命のゆりかごとなる水がかつて大量に存在していたかどうかを確認するものだったし。
しかし、オポチュニティとスピリットの2機が着陸したけど、両方が成功するとまでは思っていなかったので、バックアップとして2機飛ばしたという。JPL/NASAのmarsroverプロジェクトに深く関わったJames Gosling(Javaの生みの親、Sun Fellowにしてツール開発部門のCTO)が語るビデオを、Java Technology Conference 2004(JTC 2004)で見た時に、そう話していたのだ。
ビデオ自体は、JTC 2004の来場者へのメッセージを、Sunのエヴァンジェリストが質問しながら引き出す趣向のもの。Javaの話が主眼なのだが、関連する話としてこうした話題も出て来たのだ。そこで触れられていた、興味深かったこと。
彼自身はこのプロジェクトに3年くらい関わってきたそうだが、宇宙関係の仕事は短くて5年、普通10年くらいのスパンで行う。コンピュータ業界では3年でも長いくらいだし、考えにくいことだろう、と語りかける。
そして、成功するかどうかの瀬戸際は5分。大気圏突入に成功して無事に抜けられるかどうかの時間。ここを通過すれば、着陸までの姿勢制御はむしろ楽なのだそうだ。
つまり、5分のために10年という人生のある期間を当てる(10年あれば小学生は大人になってしまうし、decadeという単語があるくらいだ)。打ち上げが近づいた頃の、サイエンティスト達の緊張はたいへんなもので、みんなナーヴァスになっている。James Goslingが「JPL/NASAの連中はみんなおそろしく頭が切れる」という。そういう人たちが、である。
それだけに、成功した時のみんなの表情は一生忘れられないものだ、と話していた。(というか、それを語るJamesの表情も、忘れられないものだった。)
また、最後にこんなことを言っていた。「コンピュータの場合は本番同様のテストをするけど、宇宙開発の場合はテストはない、シミュレーションしか出来ない、あとはぶっつけ本番だ!」と。
日本やEUの火星探索機は2つとも失敗した。お金をかけているとは言え、今回のNASAはまずまず上首尾にことが運んでいるのかもしれない。
まぁ他にもいろいろ興味深い話が出ていたのだが、James Goslingのこういう話しぶりは、Javaというコンピュータ技術のコミュニティの、ある側面を象徴しているかもしれない。陽性で、熱烈で、ユーモア豊かで、しかも真摯な時への心配りがあるとでもいうか。
Javaのすべてがすごいとは言わない。どんな技術も一長一短があるしね。ただ、こういう人柄が醸し出す雰囲気と、それがもたらす方向性は、絶対にある。Linuxコミュニティにも、Linusの人柄が投影されているし。
日本だとそれは、村井純とインターネット、またTRONプロジェクトと坂村健、ということになるのかな。
Linuxは少し違うけど、こういう人たちのほぼ全員に共通するのは、技術が生活の中に入っていく時に何が起きるか、そしてその際に問題が生じるなら、科学でどのように解決できるか、という視点を持ち続けていることだろうか。というか、そういう人がコミュニティのリーダーになった場合に、強いんだろうな、きっと。
おぉ、最後は火星じゃなく、科学や技術のコミュニティの話になってしまったね。
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