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2004.03.16

川上弘美のエッセイ

同居人が川上弘美をいくつか買ってきた。表題作しか読んでいなかった「神様」を、まとめて読んだ。最初の「神様」に登場する熊と呼応した、最後の熊の話。ピクニックに一緒にいって、夕立がやってきて、雷が鳴って。そのとき、こわがる「わたし」に対して、むしろ楽しみ、落雷に応えて吠える熊。この瞬間が、とても秀逸。その後に、遠くへ引っ越した熊との、ちょっとさみしい手紙のやりとりが続く。雷に吠える熊があって、作品がぴしりとしまっている。やっぱりすてき。

一方、そうやって何冊か買ってきた文庫の中にあったのは、「あるような、ないような」。割合初期のエッセイ集だ。
最初、やっぱりすごいな、うまいなと思って読む。いくつか読むうちに、なんとなく一つ読んで一日くらいおいて、やっと一つ読んで、また一日くらいおいて。
つまり、なかなか読み進まない。読み進めない。
川上弘美のエッセイ、雑誌に載った一本を読む時は、するりと読んでしまう、うんうんとか、うぅんそうかなぁなどと思いつつ。だけど、こうして集積した本になってみると、小説のほうが際立っておもしろい。
これは不思議な気持ち、しかし思い起こせば納得もできる気持ち。
創作のような読み物だから、せっかくなら小説のほうが、というわけじゃない。書いていることと文体の密度の関係だと思うだが、小説のほうが呼吸が自由にとれるように感じるのだ。重ねていいますが、一本だけ読むなら、エッセイでもそんな感じは受けない。
意外にそういう方、多いかもしれないね。

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