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2004.04.23

国際ブックフェア(2)電子篇

ブックフェアの、続き(こちらに前編)。
デジタルパプリッシングフェアも同時開催されている。とはいえ、会場は地続きであり、どちらかで手続きすれば、どちらも入場できる。

デジタルパブリッシングフェアは、印刷方法や出版物制作フローの改善に関わる展示(印刷会社や、印刷技術を提供する会社)、オンデマンド出版、電子出版などがある。
注目されているのはやはり、電子出版だろう。

活字離れとはいわれるが、それでは文字から離れているかといえば、PCや携帯電話でメールを大量に書く人々は増えている。そこを読書の起点にできないかという試みは以前からPCやPDAなどで行われてきたが、今年はいよいよ本格的な動きが見えつつある。
その一つ、Σブック。松下電器産業が読書端末とデータフォーマットを開発(ここにプレスリリース)。購入した書籍データは、SDメモリカードに書き込む(著作権保護機能付リーダーライターが必要)。読書端末を、複数の書籍を束ねたものとして扱う。
もう一つ、ネット上の貸本屋、Timebook Town。端末とデータフォーマットをソニーが開発。読書端末とPC上での読書ツールについては、上記サイト内「ツールについて」で、情報を得られる。こちらは貸本。月会費が210円、1冊あたり315円〜で60日間、読書可能(60日経つとそのデータは開けなくなる)。よく読むジャンルでは、月1,000円で5冊まで借りられる、という利用形態もある。

端末そのもののブツとしての魅力は、ソニーのLIBRIeのほうがちょっと上か。画面が紙に近い、E Ink電子ペーパー(日本ではTOPPAN取扱)を採用している。画面自体が発光せず、自然光や通常の照明の光を利用して読めるので、眼が疲れにくいと思われる。また、テキスト画面のぺーじめくりなどは、今の段階ではこちらのほうが(Σブック端末より)反応が速い。
ただし、こちらは貸本である。それについて、ブースで話を伺うと、面白い答えが返ってきた。「実際にどうなるかは運営してみないとわからない面もありますが、今の段階では、一度か二度読んだらブックオフに売っちゃうような本を、これで読むということを考えています。貸してもらって面白ければ、あるいは必要なら、やっぱり紙の本を買うと思うんです。ですから、既存の出版物との共存になるのでは、とも思ってるんです」
なるほど、紙から電子への完全置換を無理にやるより、やれることからやっていくわけか。
ただ、ソニーのLIBRIeはWindows用読書ツールがあるけど、Macintosh用やLinux用はない。他の機種やOS向けにもほしいところ。

一方、Σブックのほうは、歴史的資料を電子化する展示があった。早稲田大学図書館に保存されている江戸時代の「釈迦八相倭文庫」と、大正7年刊行の樋口一葉「たけくらべ」を電子化して閲覧するというもの。インプレスのケータイWatchの記事がある。
これは廣済堂が中心になって図書館向けに行うもの。従来のマイクロフィルムからの置き換えにあたるか。
ただ、Σブックは、画面が青っぽく光るのが、個人的にはどうも気になる。これだけはどうにかならないものか。

両フォーマットは、現在のところまったく互換性がない。このあたり、今後はどうなっていくのか。まだ立ち上がったばかりなので、数年のスパンでみないとわからないだろう。一度データ化されれば、たとえばHTML(やT-Time)、XMLなどになっていれば、相互にコンバートは可能になる。たぶんそのあたりのことも、開発時には織り込まれているので、ビデオ戦争のようにはならないと願いたいもの…

1990年代初頭から電子ブックを事業にしてきたボイジャー。今年も新潮社と一緒に展示している。
ただし、ここ数年続けてきた「T-Timeビューアを活用した個人出版」というトーンは控えめになってきた。出版社が利用しているT-Time用フォーマット、ドットブックをオンデマンド印刷、ΣブックやLIBLIeなどの読書端末などにも活用するシステムを全面に立てていた。新潮社や筑摩書房などを通じて実績あるシステムを、新しい読書経験にも活かす方向性。
もちろん、従来通りドットブックから生まれた出版物を展示販売していた。
また、azur(アジュール)という新ツールを発表。これは、著作権の切れたテキストを集めて電子図書館を作るプロジェクト、青空文庫のためのツール。このツールのお試し版とともに、現在青空文庫に収録されているすべての著作物が収録されたCD-ROMが販売されていた(500円)。これは試しに購入したが、まだ起動していない。ただ、T-Timeの出来を知っている私は、けっこう期待している。そのうちレポートします。

他に、PDAや携帯電話での電子ブックビュワーも、いままでのように展示されている。

数年前からの動きが、今年に入って一挙に表面化してきた。それが一同に見られる場にもなっている。
今までの本をそのまま置換できるものが、いきなり生まれたわけではない。やっと目に見える形になったので、皆が考える機会が出てきた、ということだろう。

私個人は、紙の本は絶版や品切れが避けられないことが、どうしても気になっている。そういう時に、データ化しておいて、オンデマンドで入手できればたいへんありがたいと思う。このことは数年前から何度も試みられてきているが、いまひとつ浸透していないかもしれない。古い漫画でやると、意外にうまくいくかもしれない。
もちろん、データを手にして検索できたりすることは便利だが、そういうことは、著作権の消失したている古文書などでこそ、やりたくなる。その際、現在ない文字をどう扱うかの問題もある。青空文庫はすてきだけど、学者の支えにより公的なプロジェクトもあるとなおいいよね。
紙という媒体の便利さは、やはりある。そして、電子図書館がそれを下支えする方向性を、歓迎したい、絶版や品切れを減らすためにも。電子出版は電子読書端末だけじゃないし、電子読書端末によってむしろ、紙との補完がきちんと進むといいと思っている。

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