岡崎京子、手塚治虫文化賞大賞に
昨日、国際ブックフェアについて書いたんで、いまごろになって触れるけど。
第8回手塚治虫文化賞が決定し、4月21日の朝日新聞に選考経過も含めた報道があった。手塚治虫文化賞のページにも同じ内容が出ている。
(現在、トップページに第8回の内容が記されているが、第9回が決まると受賞の記録ページに移動すると思われる。1年以上経ってトップページに表示されていなかったら、そちらも見てください。)
マンガ大賞:岡崎京子「ヘルタースケルター」
新生賞:もりもと崇「難波鉦異本」
短編賞:秋月りす「OL進化論」など一連の作品に
特別賞:みなもと太郎「風雲児たち」など歴史マンガの新境地開拓とマンガ文化への貢献に対して
ノミネートは、佐藤秀峰「ブラックジャックによろしく」、岡崎京子「ヘルタースケルター」、矢沢あい「NANA--ナナ--」、みなもと太郎「風雲児たち」、福島聡「少年少女」、荒川弘「鋼の錬金術師」、羽海野チカ「ハチミツとクローバー」、山岸涼子「舞姫テレプシコーラ」、すずき大和「まんが紀行 奥の細道」。
モーニング連載で話題となり、医療関連法の見直しという社会問題にまで発展させた「ブラックジャックによろしく」。昨年もノミネートされたが、今年は1次選考での最高点。ただし、作者が辞退したため、これを除外しての選考となったそうだ。(岡野玲子「陰陽師」が大賞になった第5回で、1次選考最高点「刑務所の中」の作者、花輪和一が辞退したことを思い出した。)
岡崎京子は交通事故後のリハビリが続く中で、存在が忘れられないように再発売され続けていて、いまこそあげたいというところだろうか。最高傑作「リバーズ・エッジ」クラスの作品に対してじゃない、ということもわかった上での大賞だしね。
秋月りすも、ずっと読んできてあの安定感、おそろしいくらい。初期の作品に「そらまめ日記」というのがある。エッセイマンガ。モーニングで「OL進化論」掲載時に、はみだし欄の作者短信があるけど、あれを楽しみにしている人も多いんじゃないかな。あれをマンガでやったような作品。軽妙な中に観察眼、しかも作者の映画の趣味もみえて、楽しかった。すぐに連載が終わって、4コマに集中していたけど。
個人的には「少年少女」や「NANA」、「ハチミツとクローバー(通称ハチクロ)」などもおもしろく読んでいた。
特に「NANA」は、たまたま同じ名前の二人の少女が出会うというマンガらしい設定、しかも人気バンドに関係するという点で少女のあこがれを呼ぶネタが詰まっているが、その奥で“誰かに必要と思われたい”という人間の本性に触れている。それが底にあるから、主人公がスレない。10代に支持されているというが、読めばなるほどと思う。
ただ、同じ矢沢あいなら、作品のキズが見えていたとしても「パラダイス・キス」(Zipperに連載、完結)のほうが、読みやすく感じる。こちらは文化服装学院がモデルと思われる、ファッションネタ(お針子さん物語?)。こっちのほうが短い話だから読みやすいということじゃなくて、「NANA」はおそらく連載しつつどんどん話が膨らんで、ストレートな話にならなくなったんだろうな。それが魅力でもあるんだろうけど、「パラダイス・キス」でクライマックス(学園内のファッションショー)に向けて突っ走って行く熱気と、きちんと最後まで描ききったラストはなかなか。大人の描き方が一面的とかいっても、むしろ作品世界をうまく描き切るためにあえて単純化したんだろうと、好意的に思わせる何かがあった。
「ハチクロ」は美大生の世界、味がある。「少年少女」は短編オムニバスの世界、才気がある。特に「少年少女」は、もっと読まれてほしいものです。
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