アフタヌーン7月号
他に記しておきたいことあれど、とりあえずアフタヌーン6月号(4月24日発売)をば。
昨年から路線が変わり始め、ちょっと波長があわないところもあるなぁ、などと思いつつ読んでたアフタヌーン。そろそろ路線が確定してきたのだろうか。それなりに安定しているか。
今月の注目は、表紙の「ラブやん」じゃぁない。
田中ユキの新連載「神社のススメ」だ。ストレートじゃない恋愛ものを書く人、というイメージがあったが、神社できましたか…と思っていたら、舞といい、雅楽といい、神職の描き方といい、むしろ本格神社漫画となりそうだ。だいたい、神職になった人が一度は悩みそうなところに、まっさきに触れている。連載漫画的第1回としては、とてつもなく正統な話の作りなんだが、過去のこの人の作品から考えても、面白くなりそう。
連載中のものでは、岩明均「ヒストリエ」! ずいぶんゆっくりと話を立ち上げるなぁと思いながら、読んできた。エウメネス(アレクサンダー大王の書記官になった男)の少年時代回想が続いていたが、いよいよ話が立ち上がってきた。スキタイ人奴隷トラクスが、主人の酷使への復讐により、カルディア市を大混乱に陥れる。その死亡を見てから帰宅したエウメネスは、自宅で父の死に出会う。だが、父を殺したのはトラクスだというヘカタイオスの証言を、嘘だといい、査問会が開かれるところからが、今月の話。
ここでヘカタイオスは、エウメネスの言葉の端をとらえて容赦なく責めた上で、彼は実はスキタイ人隊商の子を拾って育てたんだ、証言もあると言明する。初めて知った事実に、驚愕しつつも、妙な納得さえするエウメネス。今度はヘカタイオスの言葉をとらえて、逆襲を始めようというところで、今月はおわり。
このような劇を描くと、現在の漫画界で岩明氏にかなうものはいないのではないか。さらに、この査問会の様子を見つつ、私はイラク問題に激しく揺れた各国の世論やムードを思い出したりもした。時期の一致は、まぁ偶然なのだとは思うけど。
巻頭カラー、ひぐちアサ「おおきく振りかぶって」。野球漫画は、リアルとファンタジーの距離感をどう構築するかがモンダイ。この作品は、リアルに大きく振って、球の間で生じる人に焦点を当てる。そのために、枚数を丹念に束ねて、現実の野球を描き出す。ありそうでなかったタイプ、人気が出ているのもわかる。今月で一段落、増ページは読み応えあり。
その意味では、オタものをテーマにする木尾士目「げんしけん」も、路線としては似ているか。先月の新入部員からの続きだが、サキというよく動くキャラは、やっぱりここでもよく動いてて、作者の中で一番ツボにはまってるんだな、きっと。ちなみに、テレビアニメ化だそうです。作品内作品「くじびきアンバランス」も同時アニメ化とな。もうこのあたり、オヤジなのか全部はついていけん。そうは言いつつも、私が一番笑ったのは、巻末のアメゾ・ザ・ボイスにある、作者の二コマ漫画。
星野之宣「ムーンロスト」(SFを得意とする作家の、スペースもの)は最終回、高田祐三「幻蔵人形鬼話」(桃山からくりファンタジー)は第1期完結。手堅い作品が終了。雑誌の雰囲気が少し変わっていくのだろうか。
そんな中、相変わらずの芦奈野ひろし「ヨコハマ買い出し紀行」。これ、大好きだけど、最近時々アップダウンを感じることがある。今月は二重丸。逆に、木村紺「神戸在住」は、箸休めの回かな、重い話が少し続いたし。漆原友紀「蟲師」、今月はちょっといい話。最後の陰膳、実はなくてもいいような気もしたのだが、読み返すとそうでもないかとも思う。うーむ…まぁ無理矢理結論を出さなくてもいいや。隔月連載で交互に掲載される「もっけ」も、実は楽しみにしとります。
安定してきたとよ田みのる「ラヴロマ」。Blog以前の猫時間通信2003年9月で、一度触れている。「単行本で揃えたりするのはもう飽きてしまいつつあるが、連載は楽しみに読んでる」と書いてて、まぁその基本は実は変わらないのだけど(っておい)、成長していく作品に好感。
まぁこの雑誌、ページ数が多くて、いっぱい連載があるから、他にも「勇午」だの「EDEN」だの「無限の住人」だの「あぁ女神さま」だのの安定連載までいれると、きりがねぇ。五十嵐大介「リトルフォレスト」もどうぞ。
内藤曜ノ介「ラヂオヘッド」は、もう少し連載を読んでから触れたい。
岩明均「寄生獣」、坂口尚「あっかんべェ一休」、高野文子「黄色い本」、黒田硫黄「大日本天狗党絵詞」なんて傑作が出てきたアフタヌーン。最近は静かだよなぁ、なんて思うこともあるけど、なんだかんだいいつつも、読むところはあるか。
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