いまさらアフタヌーン8月号(2)
1ヶ月遅れのアフタヌーン8月号、(1)の続き。
おそらくこの月で多くの読み手にキタ〜と感じさせたのはやっぱり、木尾士目「げんしけん」なんだろうなぁ。コミフェス当選、同人誌を作り始めると、人の思惑が動き出してくる、の巻。
こういうのをまったく知らない人もいるかもしれんので一応触れておくと、コミケなどのイベントはまず抽選に当たらないと出店できない。当たらなかった場合は、販売する冊子を知り合いのブースに置かせてもらったりもする。当選したサークルの冊子に口出しして編集みたいなことばかりやりたがる人もいたりする…まぁそういった世の中を踏まえて今回は、先輩面して現視研に出入りするハラグーロが、新会長笹原(一応主人公)の仕切る部会に乗り込んで乗っ取ろうとするも、笹原は…という話。
場慣れしてるハラグーロがお膳立てをごり押しし、初出店の笹原が背伸びなしの気合いをかまし…そしてハラグーロに声かけられちゃった有名同人作家に笹原が断りを入れ…それぞれの台詞。商業、同人、どっちでも本を作る現場にいれば考えることが、特に笹原が断りを入れる際の電話に出てくる。
最後のほうは「ぐちゃぐちゃやってないで、本作りに励まないといかんぞ〜…って読者につっこませてるんだろうなぁ」…と思ってると、最後のコマでサキが「んな事する前に本作ったら?」。
この手のマンガ、私くらいの中年おっさんになると、絵柄やテーマだけで読むのをやめてしまう人が多い。けれど、げんしけんのぬるヲタに突っ込む役(サキ)がいる、というところがミソ。マンガに目を通す人なら、そこは読んでおいてもいい。
それはそれとして、コミックの同人誌は500円以上が多い。500円というのは、たぶん印刷・製本コストは回収できるくらいの価格かな。人気がある作家(あそこはあそこで市場だからね)を集めれば、確かに1000円以上出す人がいる、しかも完売する。
文芸系の同人誌はもっと安い。まぁ売れっ子作家の文庫本が500〜1000円で買えるとなれば、もっと安くないと買ってくれないだろうとか、まずは読んでもらわないと、といった基準があるのだろうか。それにマンガと違い、同人で人気がある、というほどの市場性があまり成立していないからかもしれない。しかし、ホチキス止めの製本ならまだしも、印刷所に出したものを100〜300円で売っているのを見ると、印刷費用くらいは回収してもいいんじゃないか?とは思うぞ。
脱線した…
冬目景「ACONY」。話が、それも設定の背景が動き出した。「羊のうた」を書いた冬目景らしいパターン。次の登場は秋頃と予告がある。
新連載は滝沢麻耶「リンガ・フランカ」。有名落語家、幸福亭笑助の長男笑太は売れないお笑い芸人を、弟の喜助は落語家をやっている。髪型変えて、女のところに行こうとすると、父に呼ばれ、弟に返答を押し付けて外出。女にふられ、ファミレスでぼんやりテレビを眺めていると、速報で父の自殺を知る。あわててかけつけ、いたたまれなくなった笑太は、父の好物のプリンがなけりゃと外へ出て、帰りにくさにちょっと寄ったファミレスで、昨日も見かけた妙な男につかまる。そして…
えらい難題に挑戦したもんだ! お笑い、しかも立川、北野、松本に連なるようなネタをフィクションで描くなんて…作家でいうところの小林信彦級を目指すのか?!
話自体はお笑いそのものと違う(当然だ)、それだけにこっからさらにテンションを高めることになる。志やよし、いくなら徹底的に!
木村紺「神戸在住」、漆原友紀「蟲師」、ひぐちアサ「おおきく振りかぶって」なども好調。
四季賞からの読み切り、3本ともまずまず。益本晋輔「愛の一億円募金」が楽しめたな。
というわけで、8月号はこれくらいで。もう出ている9月号もおいおい。
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