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2004.07.17

青山ブックセンターの営業停止の反響の大きさ

自分で既に二つ記事を起こしているのだが(これこれ)、トラックバックをいただいて、さらにエントリーを追加する気になった。
(こんなことをしている場合ではないのだが、書かずにはいられん。)

というわけで、「渋谷から世界へ、そしてブラジルへ」と、「▼△だからこんなもんだって▼△GA+blog▼△」からのトラックバック、ありがとうございます。

トラックバック先のサイトを見ると、そこにさらにトラックバックがあり、コメントがある…@niftyココログ新着を見ると、いつまで経っても「青山ブックセンター閉店」のエントリーが続いている(今現在もだ!)…そこを覗くと、またコメントなどが見えたり。

ニュ−スを耳にした人々が、同時多発的にこれだけ広がりのあるリンクやコメントをしている。その内容は、いわゆる世界を揺るがすような大ニュースとは違うのに!
Weblogだと、あちこちをどんどん経巡ることができる。それを眺めていると、街の辻辻で、出会うたびに人々が弔いの言葉を交わしているようではないか!

もちろん、皆が同じ温度ではない。
重い美術書はABCで見て、アマゾンで注文して届けてもらってたけど、やっぱり買わないとダメなのかな、でも一消費者としてはそうしたかったんだよなぁ、という人も所々で見えてくる。
驚かなかった、そういう時代なんだよ、という人もいる。
感じ方は皆それぞれだし、それがいっぺんに見えてくる。

一方、COW BOOKSのような個性的小規模古書店と、ABCのような店を同列に比べるのは、ちょっとABCに気の毒かもしれない。
新刊を取り扱う書店の場合、取次を通して配本されてきた雑誌や書籍を売る。書店に入荷する量は、必ずしも書店の希望が反映されたものではなく、出版社が発行する部数と、書店の規模や立地などによって決まって来る。そして、本を返品できるのは、そうやって配本されたものを、返品期限以内に取次に戻す場合のみ。
だから、書店が自分たちで注文した本を売る場合は、返品がきかない。同様に、読者が書店に注文した本も、返品できない(だから「注文したら買ってください」と書店は言う)。さらに、岩波書店のように返品を受け付けず、買取扱いで出荷する出版社もある。
つまり、書店が商品を扱う際のリスクが比較的低い一方で、ほしい本がたくさん来るとは限らない。このあたりが、メガストア級の本屋以外は似たような品揃えになりやすい理由である。
じゃぁ、特定の分野に強い本屋を開こうと思ったら、どうするか。取次を通さず、古書や、自分で買い入れた本を売る、という手もある。それが、最近増えてきた個性的で規模の小さい書店。
でも、新刊書を売ろうと思うと、出版社は取次を通す前提で動いているから、どうしても取次との契約が必要になる。それでも個性的にいこうと思った場合は、大手の取次の営業担当に協力してもらう一方で、人文書、理工学書といった特定分野に強い小さな取次会社との取引も必要になってくる(自分たちで注文商品を売って、リスクを背負う場合もあるだろう)。
ABCがどういう商売をしていたかは、私は直接知らない。ただ、取引先の栗田出版販売は、いわゆる大手ではない。そういうところと一緒に、融通をきかせながらがんばっていたけど、メガストアやネット販売の台頭、さらに単価の高い本からの読者離れなどがボディブローのようにきいてきて、栗田もABCも両方が厳しい状態になったのだろうか…といった憶測をしてしまった。少なくとも閉店したということは、栗田と商売できないなら、ABCの営業形態を維持できないと判断した、という風に読める。

そういえば、メガストア、特にジュンク堂。
大規模の利点=「手に入るほとんどの商品を置いてますよ!」を背景に、トーク・セッションのようなイベント、カフェ併設などでABCのお株を奪ってしまったような印象がある。(神保町の三省堂本店は最近イベントを開きまくっているが、ジュンク堂の影響がないとは言い切れないだろう。)
ただ、ジュンク堂って、でかすぎるんだよな。規模としてはABCくらいが見やすく、楽しい。でも、それが閉店する…それこそ「そういう時代なのか」としか言いようがないんだろうか。
せめて、神保町の東京堂書店には、がんばってもらいたいぞ。

…本屋がなくなってほしくないなら、本屋で買いましょう。

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コメント

早速のトラバ返しありがとうございました。
本を探す楽しみは,何事にも代え難い。
これは、ネット書店では絶対無理。
特に,ABCでは何か無いかと探すことで、時間が経つのを忘れました。
本だったら、いくらで買えそうでした。
残念ですね。

投稿: Sao_Paulo | 2004.07.19 01:36

こちらこそありがとうございます。
似たような本でも、並べ方や配置で、見え方も欲しがり度も変わってきますよね。ここは初期のLIBROとともに、独自の仕入れと目配せがよかった…と過去形になっちゃうのが、やはり残念です。
しかし、この反響の大きさ、Weblogerは本が好きな方がけっこう多いということみたいですね。

投稿: kenken | 2004.07.19 12:52

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