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2004.08.07

iPodとiTunes Book Storeと、電子書籍と

iPod miniの発売が、三大紙と日経と産経の夕刊の記事になる…そして、その後もiPod mini人気は衰えず、しかも供給は潤沢でなく、第4世代iPod(白い新しいヤツね)が売れていることが、ごく普通の人々の口にのぼる…
ほんとうに一般的になりつつあるようで、驚いた。

私個人は、移動中に音楽を聴くことはまずない。その時間に何かするとなれば、読書だ。つまり、iPodが発展して電子書籍も読める形がほしいと思っていた。audible bookだけじゃなくて、ちゃんと読めるデータを、著作権管理した上で販売できるシステムがあるのだし。
そのことを7月中旬に書こうと思ってたが、同様のことを思う方は多いようで、CNET Japanの人気コラム「梅田望夫・英語で読むITトレンド」に先を越された。7月26日「iPodをめぐるあれこれ」の最後には、以下のような言葉が出てくる。

さて最後に、音楽人間というよりも活字人間の僕が欲しいなと個人的に思う「Pod」(取り外し可能な格納機)は、活字ビューアーだ。その対象は、インターネット上に溢れているコンテンツで、かなりまとまったボリューム感のあるもの。短いものをざっと眺めるのではなく、がっちりしたものをじっくり読むには、やはり本のフォーマットが優れている。気軽にコンテンツをダウンロードすると、日本語の場合ならきちんと読みやすい縦書きの本(あるいはいろいろなフォーマットに)に自動的に組んでくれるいいソフトが内蔵されているポータブル・ビューアー。ハード的にはソニーのLIBRIe(リブリエ)や、その競合や、その延長線上で用意されてくるものでいいが、電池が長持ちして、ユーザ・インタフェースとデザインをiPodのように素敵なものにしてほしい。

梅田氏がそのようなデバイスを持ったなら、青空文庫プロジェクト杉田玄白などのデータを活用して、自分専用ライブラリを構築して持ち歩きたいという。

現在でも青空文庫リーダーとして、azurがある。ただし、azurはPC上に特化しており、いまひとつ持ち歩きの利用には遠い感じがある。PDA上でT-Timeを使う手もあるけど、もっと簡単にデータ管理をしたい。
またiPod自体がすでにテキストリーダー機能を持つのだが、あの小さな画面で、縦書きなど思いもよらぬリーダーで、長文を読みたいとは思えない。(ちょっとしたテキストを眺めるのはまぁ可能だけど。)
でも、iPodは機器として大変優れているから、あんな風に軽やかな使い心地で楽しめる電子書籍ビューアがあればいいと感じる人は多いはず。

しかし、それより、もっと重大だと感じていることがある。
アメリカやヨーロッパでiPodが成功しているのは、iTunesと、iTunes Music Store(iTMS)と、iPodがスムーズに繋がって、自分の音楽に囲まれる喜びをいとも簡単に満たしてくれることだ。持っているCDを取り込める。ないアルバムや曲を、iTMSで気軽に試聴して、バラでもアルバム単位でも好きに購入できる。iTMSは、ビルボード・ヒットチャート・トップ100を年度別に見ながら購入したり、有名人のプレイリスト(Celebrity Playlist)を見て、自分が持っていない曲を、必要なら試聴した上で購入したりと、至れり尽くせりである。購入した曲を、CD-Rにも焼ける(回数制限はある)。
iTMSは日本ではまだ始まっていない。だから、いまの日本ではiPodの人気だけに目がいく。
でも、たぶんiPodの成功の背後にある、全体のサービスこそが重要であり、それはそのまま日本のレーベル(多くは電機メーカーが資本に噛んでいる)には脅威になってしまう。だから日本のレーベルはなかなかiTMSと契約したがらないようだ。
でも、気軽に試聴できて、購入も簡単で、その後の活用の幅が大きいというのはきわめて重要。

これが電子書籍にきたらどうなるだろう。Webブラウザ経由じゃなくて、ビューアとショップが緊密に結びついて、しかも著作権管理もある。試し読みもちゃんと出来る。フリーのテキストデータもちゃんとダウンロードできて、容易に持ち運び用書棚が出来上がっていく、それも古典から今のものまで好きに選べる…こんな電子書籍サービスが始まり、そのビューアとデータを持ち運ぶデバイスがある…その時こそ、真の成功になるんじゃなかろうか。
ソニーが立ち上げた貸本システムと、端末のLIBRIe。端末自体は初号機としてはよく出来ている。ただ、購入手続きやユーザインタフェースなどにまだ工夫の余地がありそうだ。PC上でのユーザインタフェースのヒントが、azurにちょっとだけあるような気もしている。
ただ、ソニーは貸本システムにこだわっていて、もしも購入したいならばちゃんと出版社の本を買ってほしい、既存の本のよさを補いつつ、ちょっと読みたい人向けのサービスなんだと言っている(以前の記事の他、各種雑誌インタビューでも同様の答えがなされている)。この基本思想は、出版社と喧嘩したいと思っていないこともあるだろうが、現在の電子書籍システムがまだ取り回しのいいものではないことを、認めているからではないだろうか。
データを所有したい人向けなら、ビューアでの立ち読みと購入がスムーズに操作できるようになってほしい。出版社も簡単に絶版にしないでほしい。そういう体系が整ってくれば、ちゃんとした市場に育ち始めるように思う。

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