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2004.10.18

玄月「美しいさなぎ」と、関西のおばはん

風邪気味…頭が重い…ついでに慢性的な肩凝り…
えぇい、じめじめしてはいかん! 気分を変えて。

ほんとに忙しくて、短編をちょびちょび読めるのみ。
だけど、傑作に出会った。
玄月「美しいさなぎ」(文學界11月号)

韓国、ソウル。関西のおばはん達のツアーを案内する、若い韓国女性ガイドを描く短編。
いや、ものすごい関西おばはんパワーの炸裂。しかも、韓国の女性の気の強いところがしっかり出てる、これもグッド。
笑いと、嗜虐趣味。山田さん(中年おばはんに紛れている唯一の男性)がいまいちのような気もするけど、そんな細かいこと、気にせずに一気に読もう。

玄月氏は、こういうふっきれた短編が時々出てくるんで、毎度楽しみ。

***

私も、関西のおばはん集団に遭遇したこと、あり。
とある山寺。一人旅である。
下山したところにある観光ホテルで、昼食をとってから、トイレを借りようとした。ものすごい中年おばはんによる混雑が、2列ある。
え? 2列?
よく見ると、女性便所だけじゃなくて、男性便所にも並んでいる。

男性便所の入り口まで行くと、おばはんが振り返った。
「お、借りてまっせ」
「なにしろ、女性のほう、いっぱいやし」
「どっか他、まわってんか、とうちゃんたちもよそ行ったし」
わたしゃ、ツアーとは無関係なんだけどな。むっとしたので、そのまま入ってみると、中で待つおばはん達、一斉にこちらを向いた。もちろん、小便器のほうには誰もいない。いたらいたで、困ったことだが。
「他、まわってんか」
黙って小便器の前に立ち、用を足し始めた。
「お、勇気、あるなぁ」
ちょいと。おばはん、なんで近くに来る?
「おい、この子、けっこう大きいでぇ」
「ほんまか」
三人ほど集まってきた。くっそー、無防備な状態とわかってるから近づいてくるんだろう、しょんべん、かけてやろうか。と思ったら、ちょうど小便が切れた。
チンチンしまうと、おばはんに一瞥くれてから、手を洗って出ようとした。
「そないな顔、せんと」
「減るもんじゃないやろ」
「そりゃとうちゃんといっしょや」
「ちがうでぇ」
「飴あるで、自分、よばれとき」
おい、飴かよ! 無視して歩き出した。こうなると、意外にも出るときのほうが恥ずかしかったりする。おばはん達は、まったく動ぜずにこっちを見送るんだ、これが。
「自分、顔、赤いでぇ」
「照れるのはこっちのほうや」
「うそや、あんたが照れるとこ、見たことないでぇ」
「うち、純真やでぇ」
離れながらここで「あんたらとはやってられませんわ、ほな失礼させてもらいますぅ」くらいの台詞しか浮かばないのが、関東人の性なのかねぇ、いやそれだけじゃなかろう、と自分にツッコミ入れつつ、ぽすぽす足音を立てて退散した。
まだ20代だった頃、真夏の京都の、有名なお寺の近くでの出来事。

後の記事へ続く]

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コメント

うーん、こりゃキッついなー。
関西おばはん。
おかん。
モーニング『ポンズ百景』に出てくるような、アホでド迫力あるオバサンの団体に、海外で遭っても引きますけどね。
玄月著「美しいさなぎ」読みたくなりました。

投稿: aman | 2004.10.22 09:29

amanさん、どうもです。めったにできない(というよりしたくない)経験ですよね。
玄月氏の短編、おもしろいというよりえげつない描写も結構多いですが(嗜虐趣味も出てくるし)、味わいがあります。文學界に掲載直後なんで、単行本収録まではもう少しかかりますかね。
『ポンズ百景』、ありましたね。大阪と東京の違いというと、『孤独のグルメ』(久住昌之・原作、谷口ジロー・作画)というのも思い出します。1997年扶桑社から出て、今は文庫に入ってます。東京もんが大阪の北区で、たこ焼きうまいんだけど、何いってもうわすべりしそうで、というのが印象的。

投稿: kenken | 2004.10.23 00:00

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