吾妻ひでお「失踪日記」
忙しい。けど、失踪しようかというほどぢゃない。
いや、失踪したいってそもそも、忙しいとかそういうのと違う(はず)。
吾妻ひでお、久々の単行本。
「失踪日記」(イースト・プレス刊)。
「夜の魚(夜を歩く・1の旧題)」は確かに読んだ。他に、「街を歩く」の初出にもちょこちょこ触れていた(全部ではない)。
しかし、他は書き下ろしである!
すごいなー、これ。
最後に収録された対談でとり・みき氏が、こういう実体験がすごいんじゃなくて、まんが的な表現がすごいんだ、と力説してるわけだが、ほんとにそう。(そういう注釈をつけなくちゃいけないことがかなしいけど、これは重要なポイントだしね。)
日本の伝統的(?)漫画でこれだけの表現が成り立つとは。いや、もともとあずま式の表現のすごさは、SFと美少女と妙なメカと哀感が、あの絵の中にいっしょくたになったすごさにあったわけなんだけど。
手塚治虫の線を継承する妙な色気は、全然衰えてなくて、コマ割にすごみさえ感じるよ。悲惨なはずの体験が、当代随一のおもしろい読み物になっちまうなんて。
「街を歩く」で淡々と触れていく、配管工の体験。社内報に思わず漫画を応募しちまうくだり。
その後に語られる作家としての来歴も「おー」などと声を上げつつ読んでしまう。
視線や視点のすごさ、体験自体の濃厚さを思い起こすに、匹敵する作品を思い浮かべられない。
あえて挙げるなら、花輪和一「刑務所の中」。(テイストは全然違うけど。)
ちなみに、吾妻ひでお作品リストのK氏とは、本館のリンク集にもあるこちらでございます。
P.S.
手塚眞氏の記事と、toricoさんの記事に、トラックバックいたします。
続伸
☆ブログ版☆ 「東京ホームレス」の村上知奈美さんより、吾妻ひでお「失踪日記」関連記事へのトラックバックをいただきました(村上さんのの記事はこちら)。私からは、最初に起こしたこの記事より、トラックバックいたします。(2005.08.14)
三匹の迷える羊たち:読書感想「失踪日記」に、トラックバックいたします。(2006.02.08)
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コメント
TBありがとうございました。
「失踪日記」には大きな衝撃を受けたので別エントリーを立ててTBもそっちで返してなどと考えていたのですがなかなか実行できそうもないので一先ずお礼を。
手塚眞氏と並べてTB頂けるとは光栄です。
カバー裏の対談でロリコンについて質問しているところ、軽く流されている感じが面白かったです。そうだ吾妻ひでおはロリコンの偉い人だったんだな、と思い出しました。
投稿: 鳥子 | 2005.04.14 01:35
こちらこそどうもです。
私などはあじまに衝撃を受けた第一世代に属するんで、やっぱりすごぉく気になりますね。カバー裏の質問など見ても「あーあー」(←そーそー、やっぱ聞いちゃうよね、流されるとわかってても!)なんて思うし。
しかし、ここまでの経験を、これほど客観視できるなんて、すごいなぁ、やっぱ。
投稿: kenken | 2005.04.15 01:08