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2005.06.14

京都賞の芸術部門にアーノンクール氏

2005年の京都賞が発表された。

先端技術部門:エレクトロニクスの分野から、「液晶を用いた平面型表示装置の実現への先駆的貢献」により、ジョージ・H・ハイルマイヤー博士(液晶ディスプレイ実現の功績により)アメリカ、69歳、テルコーディア社名誉会長)

基礎科学部門:生物科学(進化・行動・生態・環境)の分野から、「空間生態学の確立と生物圏に関する複雑適応系理論の提唱」により、サイモン・アッシャー・レヴィン教授(アメリカ、64歳、プリンストン大学教授)

思想・芸術部門:音楽の分野から、「古楽演奏の確立に貢献し、古楽演奏の視点から近現代音楽の作品でも新鮮な解釈を行っているオリジナリティに富む演奏家」ということで、ニコラウス・アーノンクール氏(オーストリア、75歳、音楽家)

京都賞は、稲森財団が主宰する賞。
2005年の詳細はこちら
また、同ページから、京都賞そのものや選考委員に関する情報も閲覧できる。

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私はとにかくアーノンクール氏の受賞に注目。
思想芸術部門だから、毎年音楽とは限らない。過去20回のうち、音楽関連受賞者は、オリヴィエ・メシアン、ジョン・ケージ、ヴィトルト・ルトスワフスキ、イアニス・クセナキス、ジェルジ・リゲティの5名。
いずれも20世紀後半のクラシック音楽界を代表する作曲家。演奏家の受賞は初めてのようだ。

まぁそんなことはどうでもよくて。
たぶん京都に…来るよね?!
演奏、あるいはレクチャーなど、公開の場で何かやらないだろうか。機会があれば、なんとか拝聴したいものだ。

***

アーノンクール氏の業績の大きさは、もはや誰もが認めるところだろう。
チェロ奏者として出発。1960年代に古楽器アンサンブルを結成、指揮者として歩み始める。バッハやヘンデルの録音で名を馳せるとともに、強烈な反感も買う。
1980年代前半、クレーメルとモーツァルトのヴァイオリン協奏曲をやるためにウィーン・フィルを振った時、最初のリハで出したアーノンクールの指示に、ウィーン・フィルのコンサートマスターが首を横に振ったという伝説さえ生まれた。
しかし、一方で共演した多くの若手〜中堅の音楽家がファンになっていく。この頃より、古楽器演奏を通じて得た、従来の演奏習慣を洗い流して、曲の新鮮な姿を取り戻す姿勢を、古典派、ロマン派へと拡大。
1980年代後半にはオランダの王立コンセルトヘボウ管弦楽団を振って、モーツァルトの有名な交響曲を矢継ぎ早に録音。1990年にバッハのカンタータ大全集(グスタフ・レオンハルト氏との共同作業)を完結、翌年にベートーヴェン交響曲の全曲ライヴと録音。その後もモーツァルトのオペラ、またシューマンの交響曲の新鮮な演奏などを経て、17世紀から20世紀のレパートリーを振る指揮者になっていった。
ベルリン・フィルの熱演を引き出したブラームスの交響曲全集、ウィーン・フィルの芳醇な響きがすばらしいスメタナの交響詩「我が祖国」全曲録音などもひどく有名。そのいずれもが、楽譜を読み直して導き出した精密なアーティキュレーションとフレージングにより、すばらしく新鮮な演奏。切れ味がよく、しかも転調の音色の変化が鮮やか。その中から、各フレーズが意味を持った生命体のように響きあってくる。おそらく誰にもまねできないだろう。
21世紀にはウィーンフィル・ニューイヤーコンサートを2度振っている。

アーノンクール氏は時差がひどく苦手であり、1960年代に一度来日しているが、以降は熱烈なオファーを何度も断っているという。
京都賞を出すのは、審査委員や稲森氏が聞きたいからではないか?と勘ぐってしまうくらい。
いくら2006年秋に来日予定(日本のオケを振る予定がある)といっても、とにかくなかなか海を渡らない方である。
だからこそ、来日して何かする予定があるなら…と思うわけです、はい。

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