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2005.07.28

Javaが出来てから10年

Javaは今年で誕生10周年を迎えている。
今年の6月下旬、アメリカで開催されたJavaOneでも10周年記念だったし、11月には2002年以来久々に日本でもJavaOneが開催される。

1995年当時、これが開発のメインストリームになると想像していた人々はいただろうか。Windowsの独占体制を阻む、一種の対抗勢力のように感じていた人々のほうが多かったはずだ。
当時コンピュータソフトウェアの研究開発に携わっていた私は、少し違う感じ方だった。

「これはおもしろい。いままでのコンピュータ言語や周辺技術の長所短所を考慮に入れつつ、たいへんバランスよい設計になっている。もしこれがまったく普及しないようなら、ソフトウェア開発の発展と成熟は大幅に遅れてしまうかもしれない」

こう感じていたのは、私だけではない。有名な研究所や大学の花形研究員達にも、似たようなことを考える人がいた。
さらに、PCなどのデスクトップ分野以外に、組込み分野に適用したいと熱望する人、プラント制御に使いたいと考える人、大規模開発に使えないかと模索する人など、様々な分野で一斉に研究や取り組みが進んでいった。
開発者を引きつけるsomethingが、Javaにはある。そのsomethingにひかれて作り出したツールやソフトウェアが生まれ、それに魅せられてビジネスにしようとする人々が現れる…この循環が非常に大きな広がりを見せ、いまや銀行のオンラインシステムから火星探索機、携帯電話に至るまで幅広く使われるようになった。
もっとも、1998年あたりまでは、世間一般からは「鳴かず飛ばずの技術」くらいにみられていたのかもしれない。1998〜1999年にかけて、サーバ分野などで大きなうねりが起き、続いて2001年に携帯電話上で動作するJavaが広がり出した頃に、「これはうまくやれば使える技術だ」と感じる人が増えていった。

Javaの最大の功績は、1980年代から研究されてきたオブジェクト指向開発を、きちんと目に見える形にして普及させ、理論と実践の橋渡しを行ったことだろう。
一言で表現するのはカンタンだが、机上の理論と、現場の渾沌を橋渡しするのはきわめて難しい。開発の現場はきわめて多忙で、理論を学んで反映させる暇など滅多に無い。一方、研究畑の人はなんとかわかってもらおうとがんばるが、かえって空回りすることも多い。
それをなんとかやり遂げられるはずだと信じさせるsomethingがあったからこそ、皆がJavaに相乗りした。IBMは採用しつつも「我々ならもっとうまくやれる」とSunに圧力もかけたが、今年和解した模様。Microsoftも和解と業務提携により、Windows Serverや.NETテクノロジーとの相互運用性を高める方向に振っている。Oracle、BEA、SAPといった巨大アプリケーションメーカーもJavaを活用する一方で、小さな会社がピリリとしたツール類をリリースする姿もある。携帯電話だけがクローズアップされる組込み分野も、まだJavaが広がる可能性を秘めている。
10年を経て、多くの会社が「覇権争いよりもインフラとして整えよう」という方向に(思惑は異なるとはいえ)動き出している。

いや、だからといってバラ色の未来がやってくるわけではない、そんなことは当たり前。
そうではなくて、Javaというベースを持つことで、思考のための共通の土台ができ上がり、そこから新たな競争と協調が始まっていく、ということ。
その意味で、主導権を誰が握るかという争いは相変わらずあるにせよ、Javaという技術コミュニティが機能していることは、少なくとも現在のコンピュータの世界ではプラスに作用している。

逆に、あらゆる分野の開発に入り込んでいったために、応用分野によって細分化されていった。最初の5年くらいは一人で様々なドキュメントを理解することも不可能ではなかったが、いまや一人ですべてを把握することは不可能になった。
今後どうなっていくかを、簡潔に述べることももはや出来ないだろう。分野によっても異なってくるのだし。

今年のJavaOneなどの情報を見る限り、これまで穏やかに発展させてきたJavaの言語仕様を、今後は積極的に(Tiger以上に)拡張していくようだ。特にC++の中で記述性が高い方法を採り入れたり、動的言語としての側面を採り入れていくように見える(SmalltalkやLispなどの特徴を、最近の研究や考え方も交えてJava流に実装していくのだろう)。
普及期は終わった、本当のイノベーションはこれからだ、というのがそのメッセージだろう。実際、動的言語のメリットに本当に触れる機会を、持てない開発者のほうが多い状況だったのだから(動的言語は導入方法をしくじると、単に実行速度の遅いシステムになってしまうため、なかなか現場で採用されてこなかったが、現在以上のハードウェア性能なら実用になるだろう)。
このことが、革新派と守旧派の分割になっていくか。単に高度なレベルの開発者と、一般開発者に二分化していくのか。
ただし、Javaに多くの開発者が魅せられたのは、理論と現実の統合をなし得るイノベーションがあったからだ。コミュニティが機能していくうちは、興味深い話が今後も出てくると思う。

それにつけても…Mac OS Xをリリースした当初はJavaにコミットしていたAppleが、最近はとても静か。確かに相互運用制でとても困る状況ではないのだが、WebObjectsも今一つの普及度だし、どうするつもりだろう。

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