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2005.07.28

大盛堂書店・渋谷本店の閉店に思う

昨年の今頃を思い出してみる。
青山ブックセンター(以下ABC)の閉店がニュースになった。
日本で火がついたばかりのブログブームは、このニュースで驚異的なうねりを見せた(私自身も例外ではない)。これでトラックバックやコメントのつけ方を学んだ人々も多かったんじゃないかな。
ABCを救おうという文化人の運動も起きた。
結果的に、書籍取次の洋販による救済に結びつき、ABCは六本木店と青山本店で営業を再開した(新宿ルミネ店、自由が丘店はBook 1stとなった)。青山本店ではカルチャーセンターも復活したようだ。

その一方で(いささか旧聞に属する話題だが)閉じた有名店もある。
2003年は、池袋西口(東武百貨店側、丸井のそば)にあった芳林堂書店池袋店。
(高田馬場店は営業し続けている。)
今年(2005年)の6月30日には、渋谷の西武百貨店向かいにあった大盛堂書店渋谷本店。
(渋谷センター街入り口にある渋谷駅前店が営業している。とはいえ…規模ははるかに縮小している。)

いずれもビルのほとんどすべてを本で埋め尽くした、規模の大きな店舗だ。ある時期までは、それぞれの地域を代表する大型書店でもあった。
渋谷の大盛堂書店は「本のデパート」と称し、あのあたりで本を見るならとりあえずは足を運ぶ店だった。政府刊行物を扱っていたことでも有名。高校から大学、また社会人になってからも、引っ越して渋谷に足が遠のくまでしばしば買い物をした。
ただ、この書店でいつも思ったのは、異常に立ち読みが多かったこと。
今はなき東急文化会館裏手で、今も営業を続けている山下書店渋谷店のほうがむしろ買っていくお客さんが多かったんじゃないか(もっとも大盛堂書店は単価の高い本をきちんと並べているので、比較の対象としてはまったくフェアじゃないのだが)。
その意味では、駅前書店のほうが営業効率はいいのかもしれない。

こうした書店がABCのような救済運動のうねりを引き起こさなかったのは「他の本屋でも買えるし」と思われてしまうからだろうか。
本やCDのような再販を制御されている商品は、流通機構で一気に書店に入荷するため、どこで買っても同じものが手に入る。本が生鮮食品のような扱いを受けないことにメリットを見出していたからこそ、このような仕組みになった。(その制度に寿命が来ているんじゃないか、ということは最近よくいわれるが、話が広がりすぎるので今はおいておく。)
一方、現在のような多品種少量で出版し、POSレジで堅実に在庫管理されていると、ほしい本が店頭にない場合も少なくない。そして、書店で本を注文するとたいてい「1〜2週間程度お待ちください、どれくらいかかるかは取次さんの在庫状況によるのでうちからはなんともいえないんです」といわれてしまうことが多い。
ネット販売や、ジュンク堂のようなメガストアは、こうした不満に応えているから、繁盛しているのだろう。

ABCは、書籍取次から来た本を並べるだけでなく、デザインや建築関係の洋書・人文関係や文芸書などを独自の品揃えで構成し、またトイ・カメラのロモなど隙間商品も扱っていた。トークショーとサイン会をセットにするイベントを流れに乗せたのもABCだ。インドア文化系の人々に愛される独特の空気があった。それが、惜しむ声が続出、再開へとつながった。
では、上記2店はどうか。芳林堂書店池袋店のように、性風俗と世相の合間を突く書籍を積極的に取り扱ったり(池袋を分析するような本ともいえるか)、他の分野でも棚をきちんと見やすく構成して、努力していた。大盛堂書店も、落ち着いた専門店としての評価はとても高かった。
ただし、多くの人々にとっては売れ筋の本も必ずしも買えるわけではない、というのが泣き所になってくる。
言葉は悪いが、中途半端な規模を維持するくらいなら、適切な規模の駅前チェーン店として展開するか、超大型店を目指すかのどちらかが、今の書店のありようだ。

私が幼かった頃は、小さな「町の本屋さん」ばかりで、大きな店は少なかった。本を手にしてから買うよりも、注文する場に近かった。そういう小さな本屋さんに置いてある本は、たいてい「常備」という特殊な帯がついていたことを、子供の私でも見逃さなかった。成長してから、それは出版社や取次などがラインナップする、書店常備用のロングセラーであることを知った。いまはそういうものも成立しにくい。
閑話休題。自宅から徒歩圏内の店が拡張して扱う冊数が増えると、とてもうれしかった。なにしろ中身を確認してから買えるし、思わぬ本を見つける楽しみもある。
今ならば、超大型店に行くか、駅前書店でサクッと買うか、評判を聞いてネット経由で注文するか、といったところだろう。本屋で長らくたゆたう人は、以前より減っているのかもしれない。
もっとも、ダ・ヴィンチのようなお手軽書評雑誌(←悪い意味で言っているのではない)もあるし、なによりWeb上でたくさんの情報が流れるようになった。今のほうが本の情報を簡単に入手できるし、入手する機会も増えて楽しい、という方だっているかもしれない。

20年、あるいは30年後、本屋はどうなっているのだろう。

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コメント

今でも店内の様子が浮かびます。
あそこは私の揺りかごでした。
地下にレコード屋、6F?に
喫茶店があった頃から知っています。当時は毎週通っていました。
さびしいです。

投稿: | 2005.08.18 00:38

レコード屋や喫茶店があったのですね、参考になります。私が知っているのは「本のデパート」として、でした。

7月初旬、シャッターが降りている店の前で、張り紙を読んでから呆然と立ち尽くす方々を、何組も見かけました。もちろん私もそうなのですが。

あの独特の密度の濃さは、他の書店では得難いものがありましたね。
やはりとても残念です。

投稿: kenken | 2005.08.18 00:59

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» 本屋が消えていく? [あーでもなくこーでもなく]
で、RSSからいくつか記事を拾い読みしていると、TBS金平氏の10/5付けの日記に、 通っていた本屋さんがどんどんなくなっていく。渋谷では必ず立ち寄っていた旭屋書店がこの8月一杯で閉店した。3年ぶりに赤阪に戻ってみたら、文鳥堂書店がとっくの昔になくなっていて、安価な寿司屋になっていた。 とあって驚く。渋谷の旭屋と言えば、地下鉄半蔵門線の駅から目の前で便利だったので、僕も頻繁に利用していた本屋だ。地下一階と地下二階に渡って店舗があるため、最初の頃よく混乱してしたりしていた(笑)。渋谷は通学路だった... [続きを読む]

受信: 2005.10.12 05:12

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