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2005.10.31

文芸誌の児童文学特集

今月初めに出たものだが。
10月7日発売の文學界十一月号は、特集が「大人のための児童文学」。

特集テーマに基づいた創作が2篇。
 藤野千夜「青いスクーター」
 大道珠貴「大きくなあれ」
解説(論考?)が1篇。
 斎藤美奈子「コドモの読書の過去と現在」
対談はあさのあつこと石井直人が「十代をどう描くのか」。
他、作家や評論家などへのアンケート「私が薦める一冊」。

1990年代、新潮にファンタジー文学の特集号があったことを思い出した。
実は内容をよく覚えていないのだが、ファンタジーノベルの隆盛、川上弘美氏のように異界も描く純文学作家の登場といった当時の流れと同期していたように思う…うーん、記憶違いだったらすみません、もう手元に雑誌が残っていないので。
(ただし、川上氏の小説は異界に力点はなく、みんなが流している普通のことにすんなり馴染めないでいることを描く点が単なるファンタジーとは違うけど。)

今回の特集も同様に、現在活躍する作家に児童文学畑の人が増えつつあること、また最近突然売れる書籍は小説というより児童文学とみたほうがいいものがあること(「セカチュウ」なんかそうじゃないか)を意識させる。

読んでみると、斎藤美奈子氏がまさにそのようなポイントをついている。
ただ、視野はもっと広く、児童文学も文学の一分野としてきちんと研究されているんだよという話をして、その流れもざっと踏まえた上で、いまの創作の現場から生まれるもの、そして世間に受容されるものとの関係を考えましょう、というたいへん手堅いもの。カテゴリーに基づいて読むんじゃなくて、読む側の意識とカテゴリーの関係を考えさせるところがいい。
もっと発展させて、新書にしてほしいな。

創作はいかにもな人選だけど、筆達者で読ませる。
ただ、特集全体としては、なんか食い足りない気が…児童文学に関わったからではない。
「大人の」を冠したために、かえってイメージをせばめることになったんじゃなかろうか。
児童文学そのものの歴史、他のジャンルとの関わりをきちんと踏まえた、研究者の論考も読みたかった。純文学作家の書いた児童文学などにも踏み込んでほしいし。
とはいえ、他誌は大江特集が多いし、先月からの表紙のイメージチェンジも悪くないし、意欲は感じる。
気になる方は、次の号が出る前にぜひ。

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