ヤングユー、突然の休刊
発売日から二日遅れで本屋に行き、ヤングユー(YOUNG YOU)を買おうと、手に取った。
ん? 『20年間のご愛読ありがとうございました!』だって?!
そう、開いてみると、休刊のお知らせが目に飛び込んできた。
びっくりした。
その一方で、なんとなくそんな感じがしたんだよな〜、とも思う自分もいた。
1986年の創刊当時がどんな受け止められ方だったのか、すごく熱心な読者とは言い兼ねる私は、よく知らない。
しかし、1988年の男女雇用機会均等法の施行、女性総合職のスタート、そして男並みにがんばる(いや、がんばらねばならぬ)女達の登場と、この雑誌が多くの読者を獲得していく時がちょうど一緒だったことは、よく覚えている。(そのくらい、多くの20代の女性が読んでいた。)
こんな印象は、女性から見るとハズしているのかもしれない、とも思う。ただ、私にはそう感じられてならなかった。
ヤングユーから生まれた名作の一つである榛野なな恵「Papa told me」で、主人公の小学生、的場知世となかよしの百合子の間に流れる会話と姿勢は、まさにその頃を彷彿とさせる。
知世の父は、作家の的場信吉。そして、百合子はその妹。つまり続柄上はおばである。が、互いに年齢を超えた友情を感じている。
そんな百合子は有名化粧品会社で総合職をこなし、会社のドレスコードを柔らかく変えてしまう。結婚のことが気にならないわけではないが、仕事で評価されることの喜びは男女変わらないことを、身をもって示す。
的場信吉の担当編集である北原さんもまた、違う人柄ながら、働く女性としての焦点がしっかりと定められている。控えめながら頑固に、しかし柔軟に作家からの作品を待ち、適切なメッセージを投げようと努力する人として。
この作品は、おとぎ話でありながら、社会に出た女性達への共感が成立しており、結果的にこのことが多くの男性読者をも獲得していた。
そして、それは他の多くの作品でも共有されていた、雑誌の空気だったように思う。
槙村さとる「おいしい関係」のような作品でも、自分に何ができるかを悩む人間像が描かれていた(女性だけでない、男女両方を描いていた)。また、恋愛を主軸に描いた多くの作品でも、一人の人間として立つ女性像は何らかの形で提示されていたと思う。
長い不況の中で雇用制度や給与体系が変わっていき、いかに安定を狙うかといった空気に覆われ出した1990年代の後半から、この雑誌の醸す空気の流れ方が微妙に変わっていったようにも感じていた。
そんな中でも、鴨居まさね「雲の上のキスケさん」のような傑作が生まれる土壌はあった。
また、他誌の休刊を受けて始まった羽海野チカ「ハチミツとクローバー」(通称ハチクロ)が大輪の花を咲かせていくのを目の当たりにした。
とはいえ、どうも雑誌全体がうまく噛み合って作品がこぼれ出すような感じを、以前ほどには受けなくなっていた。
編集長による休刊の挨拶には、「漫画雑誌としての使命、役割をひとまず終えたと判断しました」とある。
確かにそうなのかもしれない。
現在の連載は、姉妹誌であるコーラス、およびYOUの2誌に引き継がれていくという。
いまのままでは、創刊から1995年頃までに築かれた、ヤングユー全盛期の色に縛られて、むしろうまく動けないと判断したのだろう。
いよいよクライマックスを迎える「ハチクロ」などを含めて、雑誌と単行本と作家と読者に幸せな関係を築ける雑誌を、再び目の当たりにしたいものだ。
[付記]
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・milkcrownさんの「YOUNG YOU、休刊」(2005.10.14)
・日本全国見たいもんはみたいぞの会の「マンガ雑誌(YOUNGYOU)が終わるということ。」(2005.10.14)
・TOKYO REAL LIFE(yamayuriさん)の「流浪の少女マンガ」(2005.10.21)
・ページを繰る日々(たいりょんさん)の「「YOUNG YOU」の休刊に思うこと」(2005.10.24)
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コメント
はじめまして。
関連した記事を書いたのでTBさせていただきました。
>男女雇用機会均等法の施行、女性総合職のスタート、そして男並みにがんばる(いや、がんばらねばならぬ)女達の登場と、この雑誌が多くの読者を獲得していく時がちょうど一緒だった
なるほどなあと思いました。
そのさなかで購読していた自分には気付かなかった視点です。
投稿: たいりょん | 2005.10.24 16:47
ありがとうございます、こちらからもTBいたしました。
「Papa told me」をはじめとするYOUNG YOUの名作が生み出したものって、それまでのマンガにあった男性や女性のステレオタイプな描き方とはちがった面を、少女マンガの絵でやったところがえらかったのかなーと。
ともあれ、コーラスとYOUに分かれちゃうそうで、どっちをどー買えばいーのやら、来月は困ったことになりそーです。(苦笑)
投稿: Studio KenKen | 2005.10.24 22:08