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2005.10.27

著しい圧縮

最近、iTunes取り込みが復活して、以前買った盤を時々ハードディスクに落としている。いつも似たような曲ばかり聴いているのに飽きた、というのもあるか。
CDより音が悪くなっちまうのはまぁ承知の上だ。
んが、ものすご〜〜く音が悪くなっちまうCDがあった。

鈴木秀美の演奏する、バッハの無伴奏チェロ組曲。
もちろん今年発売された新盤の方。

以前も書いたけれど、演奏がすばらしい。
旧盤と比べてはるかに自然で豊かな呼吸だ。名演奏にありがちな、圧倒的な間合いで捩じ伏せられることや、論理的な正しさを訴えかけられることなど、微塵もない。
ただただ音が自然に立ち現れ、それがなんとも豊かに香る。
上質なワインや茶を味わうようだ。
まさに至芸。

それがふくよかな音で録られているから、余計すばらしい。
この盤、うちにはSACDプレイヤーはなく、単なるCDとして聴いていた。
そうであっても、ものすごく豊かな空気感が漂ってきて、うっとりする。

ところがiTunesにとりこむと、この空気感がほとんど消えてしまう…
もちろん、演奏のよい雰囲気は残っているのだけれど。
「やっぱり圧縮って著しく音を変えるんだ」
当たり前のことを、強く実感した瞬間であることよ(詠嘆)。
ハードディスクにはやさしいんだけどね。

ちなみに、たま〜にLPレコードを聴くと、圧倒的に音がよい…というより、人間の耳の特性に合っているような気がして、驚く。
もっと遡れば、SPレコードの音って、決してよい音とはいえないのに、妙に生々しく感じられる。
これを復刻してCDに焼く、なんてことも行われているけど、きっと一番大切な音の芯は抜けちまうこともあり得る。
CDのレコーディングの音だって、ここ10年ほどで急激によくなってきたが、デジタル録音の特性を知り尽くして、人間の耳に心地よくしてくれるエンジニアがいればこそだ。そういうエンジニアの手を経ない録音は、実は全然聴けたものじゃなかったりする。
iTunes Music Storeに代表されるデータ販売が普及していくにつれて、圧縮音へのチューニングが登場するのだろうか。

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コメント

はじめまして。

私もi-Tunesの音質には最初不満を感じ、いろいろ試行錯誤してきましたが、最近ようやく納得できる音が聴けるようになりました。そんな私の経験から申せば、音質が気になるとしたら、それはi-Tunesの圧縮の問題ではなく、再生するアンプとスピーカの問題ではないかと思われます(CDからの取込設定がデフォルトのAACエンコーダ128kbpsであると仮定します)。

私の場合、i-Tunes(MacOS)を再生するためにMacをFireWire経由でPHASE24(TERRATEC社24bit/192kHz対応D/Aコンバータ)に接続し、それを小型のデジタルアンプ(DrAMP)で増幅し、YAMAHAの超小型スピーカ(NS-pf7)で鳴らしています。D/A変換した後、再びデジタルアンプというのも妙ですが、現時点でこのシステムがベストです。鈴木秀美さんの無伴奏チェロ(DSD盤)も、他のCDと次元の違う凄い録音であることが良く判ります。NS-pf7の低音不足が気になる場合は、20年前の小型スピーカ(Pioneer S-101custom)に繋げて聴いています。それで高級ミニコンポを遙かに凌ぐ音が得られます。

NS-pf7は定価78000円と高価ですが、S-101は現在Yahooオークションで数千円(2本一組)で入手可能。とはいえS-101は知る人ぞ知る名機、腐っても(?)鯛は鯛、本格的なオーディオファンでも十分鑑賞に堪えられるものです。それ以外の道具も、PHASE24が約3万円、DrAMPが1万5千円と、音質とi-Tunesの利便性を考慮すれば、けっして常軌を逸脱した値段ではないと思います。このシステムで音楽を聴くようになり、最近は夜間しか音楽を聴けない事情もあいまって、私のメインシステム(Accuphase DP-85→ E-530 → DIATONE DS-10000)の出番がめっきり少なくなりました。

蛇足として、i-Podの方はあくまで外で聴く携帯プレーヤとして使うのが良く、室内でスピーカに繋げて聴くには音質的にかなり無理があるように思います。
もう一つ蛇足、i-TunesのイコライザをAcousticに設定すると弦の音に艶が出ます。これは既にご存じのこととは思いますが。
それでは失礼します。

投稿: hiratea | 2005.12.25 13:05

たびたび失礼します。
私の前のコメント、やや勢いで書いてしまいました。今一度元の文章を読み直してみると、i-Tunesに取り込んだ場合、他のCDでは問題なく鈴木秀美さんのCDで音が特別悪くなってしまうのですね。私の発言は見当外れだったかもしれません。

少し補足をします。私の場合、もちろんメインシステムの再生レベルには遙かに及びませんが、iTunesに取り込んだ後も"無伴奏"の演奏は他のCDに比べてダントツに優れた音で楽しむことができました。SACD再生で感じた空気感も十分出ていたように思います。もっとも絶対的な基準で評価しているわけではないので、これは単に個人の満足度の話かもしれませんね。
それでは失礼します。

投稿: hiratea | 2005.12.25 13:51

hirateaさん、はじめまして。
詳しいご体験をお伝えいただき、ありがとうございます。
iTunes (Mac)の音に関しては、満足はしていませんが、160kbpsでエンコードすれば、とりあえずの再生はできる、とも感じています。
どちらかといえば、2通目のコメントでおっしゃってくださっているように、私の満足度の問題のようにも思います。元の音があまりによく、かえって圧縮時の落差が目立っていました。

私の場合、住環境その他から音楽再生にお金をかけていないのですが、たとえばミニコンポKenwood K's程度でも鈴木氏"無伴奏"の録音のよさがわかる一方で、Mac + iTunes + ヘッドフォンでどうしてこうもしょぼいのか、とがっかりしてしまったのが、このエントリーを起こしたときの気持ちでした(そのときのビットレートは160kbps)。
批評的な意味合いを込めたつもりはなかったので、再生条件を記していなかったのですが、かえって誤解させてしまったかもしれません。

ただ、デジタルアンプで増幅するとよいことは驚きですし、ミニコンポをしのぐような音がすることまで想像していませんでした。圧縮音源もちゃんと扱えば聞けます、という趣旨はたいへん参考になりました。
個人的な感じ方ですが、モノラル録音のCD化をエンコード(160kbps以上)して、直接Macからヘッドフォンで聞いた場合、クラシックでもジャズでも聞きづらく感じることがあります。こういうものも、再生環境を整えれば変わるのかもしれません。

実はこのエントリーの1ヶ月後くらいに、192kbpsで取り込み直しています。このくらいだと、Macで素で聞いても印象がよくなってくることが、体感できましたので。そのことも、どこかに書いておけばよかったかもしれません。
ありがとうございました。

投稿: Studio KenKen | 2005.12.25 19:05

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