11月下旬のコミックス
世間はハガレンなのかな。
私としては、岩明均「ヒストリエ」3、および豊田徹也「undercurrent(アンダーカレント)」。
(両方とも講談社アフタヌーンKC。)
発売日は22日だったけど、私は23日にやっと買った。
「ヒストリエ」第3巻は、エウメネスが奴隷として売られていくところから、次の地での定着を描き、新たな展開につなぐところで終わる。(これから読む方のために、ネタバレはなし。)
単行本だけを読むと決めて、1年心待ちにしていた方には、
「えーー?! これでまた1年待つのぉ?!」
と叫びたくなるような展開かも。
でもね、雑誌で読んでる側もそうなの。話の展開は毎号びっくりするくらいゆっくりで、でも時々「きた、来た、キタ、キターー!」となるのが喜び。しかも、単行本準備のために、連載は2ヶ月中断。
ちなみに、連載時にペン入れされなかった背景なども含めて、きちんと仕上がっています。
第3巻はこれまでの連載分を全部収録していて、25日に発売されるアフタヌーンからすぐに続きが読める。
商売がうまいね、講談社。(まぁ当然だな。)
でも、これだけでも連載を追う価値はあり。
もうひとつは、豊田哲也「undercurrent(アンダーカレント)」全1巻。
アフタヌーンの連載時から、何度かここでも触れてきた。
でかい、厚い!
こんなにいっぱい描いていたのか。
親から譲り受けた風呂屋を、夫婦で経営しているかなえ。夫が失踪してしまい、しばらく休業していたが、結局店を閉めずに続けることに。
何も手がかりを残さず失踪した夫のことが気がかりでありつつも、人手は必要なので、組合に依頼して派遣してもらう。やってきた男は地味で無口で、流しの職人風だが、いつの間にか店になじんでいく。
旧友と再会したかなえは、夫の失踪を話さざるを得なくなった。探偵を雇うことを勧められ、格安の料金でセッティングもされてしまう。会ってみると、思ったよりずっとクセのある探偵。しかし、意外にしっかり仕事をする彼は、夫の出自が嘘で塗り固められたことを洗い出してきた。静かな衝撃を受けるかなえ。
そして…
登場人物たちの言動を追いつつ、いつの間にか話は主人公かなえの底流(undercurrent)に踏み込んでいく。
人物の多くをあえて紋切り型にしたのは、日常で役割を演じている我々の底流にある何かに踏み込んだ瞬間に何が起きるか、ということを描こうとしたからだろう。
それを緻密な人物や背景の絵で、丁寧に組み立てていく。
時々セリフが唐突になったり、後半の展開が少々性急だったりするのが気になる向きもあるだろう。
けれど、日常の中に潜む裂け目に向き合わざるを得ない時、その中でも日常は続いていくのだとわかっていてもつらい時、人は何を感じ、考え、どう行動するか、ということを誠実に描いている。なにより読後の静かな余韻がいい。
マンガ好きなら、どこかひっかかるところがある作品だ。
[追記]
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・鰯雲、秋刀魚焼いてる秋の夕日記(toricoさん)の「続アンダーカレント」(2005.12.02)
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コメント
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一応お断りまで。
投稿: Studio KenKen | 2005.12.03 03:04
こんばんは。ここのページで思い出して買いました
話の展開は史実がベースなのかもしれないけど読めないですね
確かにゆっくりというか、すごくまだ一部というか、序章だなぁって感じます。先は長いなあって
エウメネスが「よくも騙したなあ!!」って繰り返し叫ぶシーンとか、秘めた熱さが爆発するところが好きです。悲しいけど
今度、「アンダーカレント」読んでみます
投稿: イサマゴ | 2005.12.05 23:50
おひさしぶりです&コメントありがとうございます。
連載では、第3巻の続きから再開されてますが、とても不思議な引きになってますよ。しかも、来月は休載だそうで。(作者はぜひお身体をお大事に。)
「アンダーカレント」は、朝日の日曜版で、書評が出ていました(南信長氏、執筆)。とても静かな、いいマンガです。
投稿: Studio KenKen | 2005.12.06 01:11