数学で読む村上春樹
11月8日発売の文學界・12月号は、小島寛之「暗闇の幾何学−−数学で読む村上春樹」が掲載されている。
書かれるべきだが、難しいんじゃないかと思っていたテーマだ。
「解放のスーパーテクニック」という中学生向けの数学書で有名になり、後に経済学部で統計学研究者になってからも、統計や数学の啓蒙書を多数執筆している小島氏ならば、うってつけ!と思いながら読んだ。
うーん、うーん…
1)村上春樹モード文体はないほうがすっきり入り込める。
2)「数学的」という言葉を了解させるための、数学的な記述がもっとあったほうが説得力が増すと感じた。
3)論文というより、エッセイだろう…が、村上春樹の作中に現れる数学的な思考が、これまでの評論や批評で論じられていない何に触れ得るのかに、もっと踏み込んでほしかった。短い枚数に詰め込んだため、小島氏以外にも過去に触れられてきたような言葉(死・暴力・悪など)に集約されてしまったように思う。
結論:読む価値はある。けれど、食い足りない。
すごく楽しみにして読んだだけに、落胆が大きかった、というのはありますが。
いずれにせよ、この方はこういうテーマにうってつけではあるわけで。
ぜひ文春新書で丸ごと一冊、このテーマにしていただきたいです。
たぶん「文系のための数学教室」(講談社現代新書)よりおもしろくなると思います。
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