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2005.12.08

2005年のインパクト本

雑誌SIGHTの編集部が作った「ブック・オブ・ザ・イヤー2006」のことを書いたけど、新聞等も続々と2005年の回顧をやってますな。
私の場合、「今年の3冊」とか「ベスト1」などはハナからやろうと思わない。が、気になるものは挙げてみる。

今年出たもので、決定的な作品だと予感しながらも読んでないのが、町田康「告白」
いきなり読んでないものとは、うーん、何やってんだ、オレ。この本の質量の重さと文字組の細かさだと、まとめて読むのが難しい状況が続いてしまってる。読むのはおそらく正月だな。
しかも、2004年に出た「パンク侍、斬られて候」を、今年(2005年)に入ってから読んでるな
「パンク侍…」がよかったので、実はとても楽しみではある。

そういえば、2003年下半期に出たものを、やっと今年読んだ、というケースも。
とてつもなくインパクトがでかかった、阿部和重「シンセミア」
先行して読んでいた「ニッポニア・ニッポン」「グランド・フィナーレ」(芥川賞受賞作)とあわせて、やっと神町サーガにたどり着けた。
今年は村上龍「半島を出よ」の年だったのかもしれないが(こちらに感想あり)、作品の恐ろしさは「シンセミア」のほうが重い。
それだけに、どうもねじれて分かりにくいのは「グランド・フィナーレ」のほうかもしれない。ロリコン自体は作品の焦点には読めないが、それだけに何を描こうとしたのかも見えにくい。
この「きれいに終われない」感じこそが、グランド・フィナーレというタイトルに現れているんだろうな。とんでもない事件が起こった町に、東京へ行っていたロリコン男が戻ってきて、東京で起こしたことと同じ状況に、予定していたかのように置かれる。おい、またかよ…
ここをどう味わうかが好悪の分かれ目になりそう。
(私は結構好きです。)

辻原登「枯葉の中の青い炎」も、読み応えがあった。
作者は朝日新聞朝刊に「花はさくら木」を連載、完結した。新聞小説をがっつり読むことは少ないのだが、これは毎朝読んだ。読めなければ深夜に開いた。
宝暦11(1761)年の春、御所。最後の女帝となる後桜町天皇が、智子内親王だった頃。美しいひな祭りの舟遊びから始まるこの小説は、田沼意次ら実在の人物と、想像上の人物が、女帝問題、朝鮮半島との交流、江戸期に行われた実質上の市場経済政策への移行などをネタに、縦横無尽に駆け巡る。問題は濃いけれど、登場人物すべてが前向きに関わっていく姿が潔い。文はさわやかで無駄なく、とても楽しそうな作者の講談が、上質なエンタテイメントとなった。
まさに「すてき」。こんなものも、挙げておきたい。

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