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2005.12.03

もう今年の総括の時期なのか

たわけたSubjectつけてるけど、当然。
師走なんだから>自分

「SIGHT編集部・編
 日本一怖い!ブック・オブ・ザ・イヤー2006」

何冊か買うついでに、ぺらりとめくってみたら、高橋源一郎氏と斉藤美奈子氏の対談が滅法おもしろくて、つい買っちまった。
阿部和重やジョン・アーヴィングのインタビューなども載ってるし、意外に安いし(780円、税別)。

こういう本は、あんまりマにうけず、
  「へ〜。ほ〜」
  「うんうん、そーだよねぇ」
  「なるほど、そう読みますか…」
などと、さらさらページをめくっていくもんです。
'80年代以降のポストモダン文化をがっつり引き継いでいるのも、強引に突っ込まないのが粋ってもんです。

だけど、編集部のセレクトした今年の本に触れるうちに、急に正気に戻るページがある。

「突然ですが脇道対談
 教養主義の崩壊を反省する!」

要約すれば、'80年代以降のポストモダン的な言説−−つまりそれ以前の教養主義を、ちょっと遊び心まじえて解体しちゃったこと−−は、失敗だったかもしんない、という話。(一応断っておくと、両氏ともにその先鋒にいた方だからね。)
もちろん趣旨はじゅうぶんにわかるし、興ざめしたりもしない。
けど、この声がまさに届いてほしい30〜40代は、この書物を手に取る可能性も低いんじゃなかろーか。

それに、'70〜'90年代にかけて、文化を整地して、初期化してしまったのは、次のナニかを生み出すために、必要だったからじゃなかろうか。
19世紀のロマン派音楽は、それまでの音楽教養と断絶があったからこそ、生まれたわけで。

というのは、絲山秋子「逃亡くそたわけ」に関する両氏の評は、いろいろ適切なことを話す割に、最後でちょっとズレていくように思うのだ。
まぁ「まとまりがよすぎるぜ、小説って、もっとクレイジーだろ? そんな優等生でどうするよ?」ってぇのは、大はずれではないけど。
でも、ネタの割に短いこの小説は、だからといって決して密度も薄いわけじゃない。
20世紀のような自我の分裂も、逃亡や爆発による変化も起きにくい(起こしてもあっという間に消費して回収されてしまう)今の空気を、濃厚に切り取っている。それ以外の枝葉をあえて切り落としてるように読める。(まるで「選択と集中」が大切な今の経営みたいだな…)
こういう部分はむしろ、今の20〜30代のほうがリアルに感じてるのかもしれないね。

いずれにせよ、ちょっと楽しいひとときを味わえる対談。

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