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2006.01.17

正月に読むはずだったのに

正月にちょっとだけ体調を崩したり、なんだかんだと用事が立て込んだりして、読もうと思っていた本(後述)は、松の内が明ける頃にやっと手を付け出した。
しかも、すぐに文芸誌が出て、読み散らかしたり。

ちなみに、群像の新連載に、橋本治「院政の日本人」がある。

双調平家物語ノート「権力の日本人」の続編。相変わらずの思考の過程を書き連ねていく文体だけど、おもしろい。
平家物語は平安時代の終わりである。それは藤原家がやった「家から皇后をおくり、生まれた皇子(外孫)を天皇につける」ことで権力を得ることが常套手段だった時代が終わった時であり、それに固執した平家は滅びて、そうでなかった源氏が次の時代に赴く。
では、この権力把握の常套手段はどこから始まったか、それを知ろうと書き出した、という。そして奈良に戻り、持統天皇から孝謙天皇のラインにたどり着いた。藤原不比等にまつわる系図にたどりつき、そこで一度連載を終えた(一休み、と書いている)。
しかし、遠山美都男氏「大化改新−−六四五年六月の宮廷革命」(中公新書)によれば、不比等の妻となって後の藤原家全盛の基になった女性は、あの大化改新で滅ぼされた蘇我氏とつながる女性だったことを知った。しかも、蘇我氏は葛城氏に関係していて、そこから天皇に妃をおくる立場を受け継いだのではないかという。
そして、大化改新からさかのぼっていくのが連載の始まり…
でも、ただ追ってるだけではない。中国が男の血だけを残す文化だったのに対して、后に力があることで生じることの意味を追う。表面を見れば単純でうまく言えない、そこで無意識下に広がる絡んだ糸をほぐしていく、そんな感じ。現代に照射されてくる意味合いが味わい深い。
まとまったら、単行本で再読したいな。

***

町田康「告白」は、松の内が明ける手前くらいから、やっと読み出した。
今も読んでいる。なにしろ、移動中などに読むだけ、しかも長い。なかなか終わらん。

「くっすん大黒」、「権現の大黒」、「夫婦茶碗」、はたまた怪作「パンク侍、斬られて候」などともまったく違う書き出し。
しばらく文体に慣れるのに、時間がかかった。
何かに引っ張られて読んでいくうち、慣れてきた。
あぁなるほど。
明治初頭の村社会で、近代人的な思惟をたまたま持ってしまった男。その男のぐだぐだでデベデベな思考の垂れ流しが溢れる。
作者の語りが流れると、ふいに城戸熊太郎に入り込む。時々、他の登場人物にも取り憑く。そして、内面を垂れ流す。
そう、作者が登場人物に憑依して、そこから語る。
ちょっと大江健三郎入ってませんか、とも思ったり。(そういえば文芸誌で対談していたな、「告白」を読んでいないので、そちらもまだ読んでいないけど。)

論理的なことを考えなければならないとき、これを読むと、目前の出来事との落差に驚く。
でも、本を開けば読んでいく自分がいる。そして、一定のページ数を過ぎると、一度閉じて、生活に戻る。
しかしふと、おそらく作者にとってはこの書き方しかなかったのだろうが、他にもなかったのか、という気持ちになって、思い出されたり。
もちろん読書という経験を楽しんでいる。それはしかし、宮部みゆき氏のような作品の中に浸って、喜怒哀楽をともにするのとはたいぶ違う。むしろ、私にはこういう作品の方が本を読んでいる気持ちになる(だからといって宮部氏の作品はつまらないとか、レベルが低いなどと言う訳ではない)。読了まではもうしばらくかかるだろうけれど、どうせだからたっぷり楽しむことにする。

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