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2006.01.20

外で音を堪能する、またはSHUREの音

うわ。ついに買ってしまった。SHURE E4c。
iPod mini本体より高いイヤホンである。
しかし、ここ数年で買ったものの中では、もっともすてきな買い物だった。

■iPodで試したイヤホン達■

昨年の初夏、iPodのある生活がどんなものなのか、一度は経験しておこうと、iPod miniを買った(その時の記事はこちら)。
流行りを経験しておこうということは考えていなかった。むしろ、自分が持つ音楽ライブラリを連れて歩くのってどんな感じがするのだろう、という気持ちから買ってみたのだった。
そのことはまた別の機会に書こう。
むしろ気になったのは、純正のイヤホンの音。聞きやすいとは思うけど、かなりしょぼい音がする。もうちょっと快適にしたいと思い、いくつか買ってみた。
しかし、持ち歩くイヤホンは落としたり断線したりするだろうから、高いものはどうかとも思う。そこで、だいたい5千円以下に絞ってみた(一部例外あり)。

オープン型ではSONYMDR-888ゼンハイザー(SENNHEISER、ドイツ製品)のMX-500など。
中ではゼンハイザーのMX-500が比較的自然な音でとても聞きやすい。後継製品のMX-550にはかなりがっかりさせられたが、MX-500は妙な誇張がなく、特にアコースティックな響きやボーカルの再生に向く。とても2,500〜3,500円とは思えない。
しかし、電車の中は騒音が大きく、ほとんど聞こえなくなる瞬間がある。かといってがんがん大きな音を鳴らすと、うるさくてかなわない。これは家でMacに接続するためのイヤホンとした。

やっぱりある程度の遮音性が必要かと思い、カナル型イヤホンも試した。
SONYはどうも音がいびつだ。かつてのヘッドフォンメーカーとしての意地はどこにいったのだろう。
結局、ビクターHP-FX55Sを買った。愛称「グミ」のカナル型。
ちょっとこもった感じもあるが、電車の中などで意外にも自然に聞こえる。通勤通学専用モデルとでもいうべきか。
また、遮音性はいくらかあるという程度。逆にいえば周囲に起きる出来事くらいはわかる。つまり、外で使うiPodには向いていると判断した。

あれこれ使ってみて、外ではビクターのカナル型を使うのが、一応の定番にはなった。(家ではiPodは使いません。iTunesか、ミニコンポを鳴らします。)

■なんとなく消えないイヤな感じ■

しかし、オープン型、カナル型のどちらで聞いていても、外でiPodを聴く際にはなんとなく聴きづらさがある。
雑音を消そうと音を大きくすれば耳が痛いし、かといって音を小さくすれば聴きづらい。
しかも、5千円くらいまでのイヤホンは、どこか音に濁りが感じられる(歪んでいるというより、濁っている)。それが周囲の雑音と混じると、ちょっとイヤな感じが残る。ずっと聴くにはあまりうれしくない。

最大の問題は、iPodを外で使うと、耳から頭部側面、そして首の裏側にかけて、なんとなくざわざわした感じが残ってしまうことだった。先に触れたイヤな感じが原因だろう。
体調が悪い時には、気持ち悪くなることもある。

そこで、静かな環境ではどうかと、たとえば石神井公園や小石川植物園のような、緑が多くて静かな場所にも持ち込んでみた。
風切り音は目立つが、まぁ気にならない程度にはなる。濁りと、街の騒音が相乗して、不快感をもたらしていたようだ。
別にiPodが悪いわけではないことはわかったが、じゃぁどうすればいいのか。

iPodを連れ歩いても、年がら年中使わない。調子がいい時に、ちょっと音楽を鳴らす程度、という使い方に落ち着きつつあった。
まぁそれでも、次に演奏する曲を耳にするという使い方には十分ではあったが、もうちょっと何とかならんもんか、せめて気持ち悪くなるようなことはなくなってほしい、そう思うこともしばしば。

■試したらつかまってしまった■

さて、アキバには、SHUREやEtymoticのイヤホンを自由に試用できる売り場がいくつかある(たとえばLaOX)。
たまたま通りかかった時、出来心で聞いてみた。
1万円クラスでもまったく違う音がする。歪みはあるが、濁っているわけじゃない。それ以上に音に色気がある。
接続してあるのはCDプレイヤーなのだが、それを割り引いたとしても、これは明らかに違うものだという感触があった。

もっと落ち着いて視聴できる店(たとえばダイナミックオーディオなど)もある。そこに、iPod miniを持参した。自分の音源で試してみることにしたのだ。

最初はSHUREE2c、E3cに、EtymoticER-6iである。
耳を疑った。
「これは・・・まさしく音楽が鳴っている」
低音域も中高音域も、かなりフラットに鳴っている。iPodにこんなにたくさんの音が詰まっていたのか、と驚いた。
ただし、性格付けはまったく異なる。SHUREは、多少の歪をおそれず、できるだけ音の特徴をとらえて鳴らす方向性のようだ。E2cよりもE3cのほうが音に伸びがあるが、人によってはE2cのほうがリーズナブルというケースもありそうだ(気楽にポップスを聴くなら、E2cでもじゅうぶんかもしれない)。
一方のEtymoticは、できるだけ正確に、測定器のように鳴らそうとする意志を感じる。
ハイファイ、分解能を考えればEtymoticだが、どうも官能性に欠ける。私の耳には今ひとつ入れにくいようにも感じる。
一方のSHUREは付け心地も、私の耳によい。

そこで、SHUREの上位機種、E4c、E5cも試してみた。
E4cを耳にして、腰を抜かしてしまった。
音の透明度がまったく異なる。汚れたガラスをきれいに拭き取ったようなクリアさ。Etymoticが持つような透明感に近い印象を維持しつつ、音のエッジや官能性も失っていない。E3cより濁りがずっと少ない。とにかく気持ちいいのだ。
E5cは、さらにまったく異なる。ヘッドフォンのような広がりのある音。よりダイナミックレンジは広く、低音がずっしり出る。ただし、音の歪という面では、E4cよりやや大き目だが、不自然な感じはない。
しかし、E5cは5万円クラスだ。それに、ここまで来ると、再生機の性能も考えないといけないように思う。

SHUREのラインナップでは、E4cがiPod系の機器に向けて最適化された、独特の製品であるように感じられた。おそらく音を作りこんでいるだろうが、そのような作為性をあまり感じさせないように気を配ってもいる。
ずっと聞いていたくなるような音とでもいえばいいか。

結局、E4cをレジに持っていった。イヤホンとは思えぬ大枚をはたいて、である。

■満足度はかなり高いです■

買った直後は、中音域寄りに感じられたが、数日使っているうちに鳴りがよくなってきたのか、様々な音が聞こえてくるようになった。
何度も思うのは、音に濁りがないこと。そして、それがものすごく幸せをもたらす、ということ。
この製品を使えば、耳や頭部周辺がざわついたり、いやな感じを味わうことが(いまのところ)ない。気持ち悪くなることもない。

また、高級カナル型イヤホンらしく、非常に遮音性が高い。かなり余分な音をカットする。地下鉄の中でもピアノやヴァイオリンのソロを鑑賞できるくらいである。
こうなると、歩く際には絶対に使えない。周囲の状況を音で察知できないからだ。
でも、ここまで満足度の高い音を耳にしていると、潔く停止ボタンを押して、イヤホンを耳から外してしまえる。そのほうがむしろ気持ちがいい。
たとえるなら、缶コーヒーをだらだらと何本も飲むより、ちゃんとしたお店で500円以上払ってドリップしたコーヒーを1杯飲む方が、はるかに満足する感じ。

ところで、わざわざ高いイヤホンを購入したのは、音が変わることで、聴くという体験が変わるかどうかを試してみたかったから。
これについては、もうちょっとエージングを行ってから、改めて書いてみたい。

というわけで、iPodも思ったより音が詰まってるんだ、という気持ちをかみしめている私なのだった。

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