ヌード・マン・ウォーキング
3月7日発売の文芸誌を買ってしまった頃にこんなことを書くのはとってもナンなんだけど。
2月7日発売、新潮3月号の井伊直行「ヌード・マン・ウォーキング」は、インパクトがあった。
「細川はいつか娘に捨てられると思っていた」と書き出すこの作品。娘、息子、妻、そして住居と主人公のいる状況が、ある予感を伴いながらも淡々と語られていく。その予感は、つるりと裸で歩行する趣味にたどり着く。
話法、エピソードをつなぐ順番がすべてきれいにからみあいつつ、ここにたどり着いた時に醸し出される絶妙な解放感。
それゆえ、細川が繰り返す行為の内容を、ともに反芻してしまう。
危険を承知の上で繰り返すうちに、ついに危機を迎える。
そして、突然の転調と終幕。
(ネタばれのため、転調の内容は伏せます。)
ここを見据えた上で全体の構成が自然に整い、同時に語り口が定まったかのような佇まい。うまくて、味わいあります。
もう書店では返品されてしまった雑誌の話題で申し訳ないけど、図書館で、あるいは単行本収録された際にはぜひどうぞ。
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