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2006.04.19

神戸在住、完結

アフタヌーン5月号(3月25日発売)で、木村紺「神戸在住」、完結。

大学1年生の生活スケッチから始まり、語学クラスの仲良し3人組、文科系サークル英語文化研究部と学園祭、憧れのイラストレータ日和との交流と死、ゼミの生活を経て、就職と卒業で締めくくり。
内気で涙もろいが、静かに頑固な美術専攻生、辰木桂の日々を淡々と描いたマンガ。固定ファンがついてしっかり完結。卒業制作の後は駆け足だったような気もするけど、とにかく祝!
単行本は既に8巻まで出ている。年内に最終巻発売の予定とのこと。
(ちなみに、単行本はカバーも外して見なければなりません。マンガ道のお約束ですね。)

この作品で一番よかったのは、大学生活の推移が自然に描かれていたこと。
様々な地区から集まった人々が、雑多に語学クラスに放り込まれる。徐々に打ち解けあえる友達を見つけたり、サークルに入るものもあったり。そんな1〜2年生の開放的な時間が、3年でゼミに入る頃から変わる。気の置けない仲間と過ごす時間が減る。研究の時間が増え、生活は絞り込まれ、先生からシボられ、将来のことも考えざるを得ない。
でも、4年生の最後まで、大学生活には違いない。卒業式前後の、学生の暮らしと、これからの暮らしがクロスする瞬間も含めて、きちんと描いた。だから最終回は、高校時代の友人、ゼミ、仲良し3人組、サークル、就職ときちんとカメラが巡っていく。全体を手紙仕立てにして。
多分この構成は、だいぶ前に決まっていたのであろう。満足の完結。

昨年購入した四季賞クロニクルに、デビュー作が収録されていた。連載につながった作品で、単行本にももちろん入ってる。
その頃に比べると後半はずいぶんと線が安定してきた。
もっとも、私は最初期の絵、結構好きだ。線に味がある。

全体を通じて、やはり3巻に収録された阪神大震災にまつわる濃厚な話が、ハイライトだったか。
仲良し3人組の一人、和歌子の彼氏は、中国出身で数カ国語を操る院生の林浩。この二人が結びついた背後にある深く壮絶な経験を、震災後に引っ越してきた桂が聞いた話。
既に平和そうに見える街、よく笑う皆の表情の奥に隠れていた重い話を受け止めるエピソードは、淡々としているようでいて何かありそうな、と思うこの作品に、決定的な余韻をもたらし、全体を引き締めた。

正直に言えば、この後を続けるのはかなりたいへんだったろうと感じた回もある。日和の死にまつわる主人公の重い経験は、他の人物のエピソードほど強い説得力を持ち得なかったかもしれないことも含めて。
しかし、最終的に作者は迷うことはなかったようだ。
卒業に向かって積み上がっていく学校と家庭の日々を、多少の凸凹も含めてじっくり描いていくことに専念していった。それが功を奏して、最終的には大学生活の濃淡を読ませ切ることができた。

地味な作品をきちんと送ることが出来たアフタヌーンという雑誌にも拍手を。

***

「ヨコハマ買い出し紀行」が前号で完結。そして、今回は「神戸在住」。
次号は、秋山はる「すずめ すずなり」がフィナーレだそうである。ちょっと早くないか?

一方で、植芝理一「謎の彼女X」が新連載。当然「謎の物体X」とかけてるんだろうな。
幸村誠「ヴィンランド・サガ」がマガジンから引っ越してきたこと、岩明均「ヒストリエ」(5月号は休載)があることなども含めて、アフタヌーンは非日常路線を突っ走るつもりなのかな。
木尾士目「げんしけん」は大学生活だけど、中身はだいぶ異なるし。ひぐちアサ「おおききく振りかぶって」は高校野球ネタで現実路線だけど、いわゆる日常ものとは違うわな。)

ちなみに、北道正幸「プ〜ねこ」も楽しみの一つ。これはなくならんでほしい。

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