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2006.07.08

東京国際ブックフェア&デジタルパブリッシングフェア 2006

今年も開催中の東京国際ブックフェア 2006
同時開催のデジタルパブリッシングフェア 2006も含めて、見てきた。
開催は7/6(木)〜9(日)、東京ビッグサイト。
(ちなみに、昨年の様子はこちら。)

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ブックフェアはここ数年、本を安く買えることを話題にしてきた感がある(そのように新聞記事が出ることもあった)。ただ、今年はそれを極端に前面に押し出してはいない。
出版社や編集プロダクション、取次、印刷、その他関連商品や技術などが一同に会して展示および商談を行う場であるのだから、本来の方向に少し戻った、とも言える。

とはいえ例によって、平凡社、みすず書房、白水社、未来社、勁草書房、国書刊行会など人文学関連の出版社(もちろん各大学の出版部門も含む)、あるいは歴史や自然科学の出版社、児童書などの出版社にとっては、地味で目立ちにくい良書を展示・販売する機会になっている。(多くの版元が20%オフを実施していた。)
書店の棚をとるのが大変な版元にとって、目に触れたり、手に取る機会があるだけでも意義があるだろう。その意味で、地味な版元ほど、ひそかに力を入れて展示・販売している傾向を感じる。
そういった分野で元気があった藤原書店は、今年は出展していなかった。こういう版元の場合、書店で指名買いされる傾向が強いから、フェアに出るより他にやることがあるのかもしれない、と勝手に思ったりした。
ちなみに、国書刊行会がちょっと離れたところにあり、少し割を食ってるのかしら。いよいよ一般読者が押しかける週末だし、がんばってほしいな。

ところで、売れ筋を抱える出版社の場合。
たとえば、角川書店はケロロ軍曹のグッズ販売が前面に出ていたり。
たとえば、マガジンハウスは「今日の猫村さん」の湯けむりバージョンがさりげなく販売されていたり(書店在庫はもうなく、ここでも一人一冊まで)。
といった、いかにもイベント向けの商売を展開していた。こういうのが好きな方は早めにどうぞ。

一方、新潮社は塩野七生「ローマ人の物語」が今年で15巻完結を迎えるため、その一点に絞った展示。
特性の美麗なリーフレット(カタログ)とともに、文庫サイズのメモ帳を配っていた。これは「ローマ人の物語」から選んだ名言集が入っていて、淡い紫の紙が上品な味わい。なかなかしゃれている(紫の意味は、会場で直接どうぞ)。しかも、一人で何冊も持っていっていいそうだ。もっとも、重くなるからそんなにたくさんもらう気にはなれないけれど。
こういう潔さは結構好きだけど、意外に人は集まっていない。展示って会社に所属していた頃に広報がやっているのを見たりしてきたけど、本当に難しいものだ…

と思うと、このフェアは「本とは何か、それをどう売るか」といった実験の場でもあるのだろう。

いずれにせよ、これだけ本が集まると、本が好きな人間はそれだけで妙にハイになる。来場者の多くの顔もそのように見受ける。

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ところで、同時開催のデジタルパブリッシングフェア。

ここ数年の傾向からくっきり変化したのは、版元から原稿データを預かり、印刷にもPCにもPDAにもケータイにも配信できる出版用データに変換して納品する、というソリューション販売の形態になってきたこと。
WordやAdobe CSのデータを電子出版向けXMLデータに変換するソフトウェアやソリューションの展示はあるが、これまでのように版元の編集者が使う編集用ソフトウェアをパッケージ販売するブースはほとんどない。
これはボイジャーその他の電子出版関連の草分けも含めて、である。

版元が編集した原稿を、印刷会社に渡して本にする、というのが紙媒体での流れだった。これが電子出版でどう位置づけられるかについて、そろそろ見えてきたということだろうか。
オンデマンド出版も、この路線の中で位置を見出していくように感じる。

もっとも、ボイジャーは青空文庫のことも積極的に打ち出しており、私も敬意を表してCD-ROMを買い求めた。

***

そういうのを見た後で、大日本印刷の活版印刷デモを見た。
実際に活版印刷がどのような手順で行われているかを映像で流しているもの。また、実際に活字を彫るデモ、組んだ活版から刷ってみせるデモまである。
これを見ていると「ブツの力ってすげぇなぁ」と思ってしまう。
秀英体という字体は力強くも優雅ですばらしいが、活版の圧力も含めて雰囲気なのだなぁ、と。

文學界7月号(6/7発売)で、詩人の荒川洋治は書いていた(特集・国語再建、「言葉をめぐる12章」より、p.139の下段)。

活字の組まれていくようすを知ると、ひとつひとつの文字をもっとだいじに書こうという気持ちになる。本づくりの現場を知ると、意識は変わる。一冊の本を手にしたとき、どの部分も、しっかり見つめるようになる。

本のなかみに感動するだけでは、本を愛する気持ちは十分には育たない。いずれ本から離れてしまう。なかみとは、はかないものだ。物として本を知ると、本への愛情が、生まれたあとも変わらない。持続する。

まことにその通りだった。
いまの10代はどう感じるのだろう。

[注]この荒川洋治のエッセイは出色です。必読です。

***

大日本印刷はもちろん、過去を振り返るためにデモをしていたわけではない。
この活版のノウハウを電子組版、電子出版にも活かしていきたい、という趣旨の展示をしていた。
200dpiの高精細ディスプレイを前提にした、よりディスプレイで読みやすい字体の開発。そして、その採用の訴えかけ。

30年後、本はどうなっているんだろう。
そう思わずにはいられない展示だった。

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・DTP Transit「デジタルパブリッシングフェアのヒトコマ」(2006.08.05)

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