« アクセス解析、新版に | トップページ | すばらしい蛮勇 »

2006.08.05

20世紀中葉に輝いたソプラノ、眠る

アサヒ・コムで午前中に発見(記事はこちら)、夕刊にも掲載されたのは、エリザベート・シュワルツコップの訃報。享年90歳。

プロイセン生まれ、2次大戦前から活動を開始し(最初はコロラトゥーラで出発)、特に戦後はリリカルなソプラノの名手として、ドイツ語によるリート、オペラにおいて輝く美声を世界中に響かせた。

フルトヴェングラー復帰による戦後初のバイロイト音楽祭、伝説的な「第9」で白熱のような輝きを見せる声。
カラヤンの名演奏を決定的なものにしたのは、リヒャルト・シュトラウス「ばらの騎士」における元帥夫人の、超絶的なのどのコントロール(カラヤンはトモワ=シントウに出会うまで、20年近く再録音しなかった)。
あるいは、モーツァルト「フィガロの結婚」における伯爵夫人の清潔なフレージング。
さらにシューマン、ヴォルフ、リヒャルト・シュトラウスといった19世紀後半〜20世紀におけるドイツ・リート。

あまりに知的で完全主義であるため、嫌う人もいたが、その多くが豊かな音楽性、声とフレーズの制御の素晴らしさを認めていた。
1950〜60年代、第2次大戦が落ち着き、ウィーン・フィルやベルリン・フィルが高揚期を迎えていた頃、そのオケを圧倒するような美声と正確な発音で、後代にリファレンスされるような名唱を残した。こういった「正しいドイツの歌」とでもいう歌を継承する歌手は、少なくなっているのかもしれない。まさにプロイセン人の面目躍如。

オペラを活動の中心においた点でマリア=カラスらと並べられることが多いが、もちろん彼女に匹敵するようなオペラやリートの歌い手は、バリトンのディートリッヒ・フィッシャー=ディスカウだ。実際、シュワルツコップは彼に賛辞を贈り、いくつかの盤で共演している。
(そのディースカウももう最前線を引退した。)

***

1976年でオペラ引退、1979年でリート引退。以降は後進の育成に過ごしてきたという。
これで思い出すのは、NHKで放映された公開レッスンの様子。(相当前のことであり、大筋このような意味のことを言っていたという記憶に基づいているので、正確さには欠けると思うが。)

音大生の歌を途中で止めて「あなたはいま、なんでこの音を出したのか。なんでその音色、なんでそう発声するのか」
驚いた音大生が何と答えようか戸惑っていると「譜をきちんと読みなさい、その形をきちんと表現するために自分が今何をしなければならないかを理解し、実際に何をしているのかを意識して完全に制御しなさい。それができなければ舞台で歌う必要はありません」

あの芸術は、この意識の高さをベースに飛躍したところで生まれる。
というより、2次大戦後の音楽シーンをリードした人々の意識は、これがベースだったのだろう。その一端を垣間見せられ、それはどんな分野にも当てはまる基本でもあると思い至った。

合掌。

|

« アクセス解析、新版に | トップページ | すばらしい蛮勇 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/16751/11270506

この記事へのトラックバック一覧です: 20世紀中葉に輝いたソプラノ、眠る:

« アクセス解析、新版に | トップページ | すばらしい蛮勇 »