第5回文学フリマの後で考えた
今年も文学フリマに客として行ってきた。
一周しつつ、知人のブースで挨拶。
おおよその状況をつかんでから、目に付く本を手に取り、最初の部分を読んでみる。読み進められれば購入。そうでなければ頭を軽く下げ、置いて立ち去る。
(注:立ち読みコーナーで全サークルの冊子を手にすることは出来るのだが、あまりに混雑しており、ブースで直接見ることにした。)
これまでは、原稿をコピーし、ホチキスで綴じて「1冊100円」などという形で、完売を目指すサークルがたくさんあった。
今年は冊子製本されたサークルが圧倒的に多かった。単価も200〜300円以上、中には500〜1000円というサークルもちらほら。
悪くない傾向だと思う。
ちなみに話題の長嶋有、福永信、柴崎友香といった現役商業作家の参加したサークルの冊子は、他を見ているうちに売り切れていた。サインがもらえるとあって、記録的な行列になっていたようだ。
事前に朝日新聞夕刊で記事になっていたからか。記事は、長嶋有らが同人誌を刊行、といった見出し。そうじゃなくて、文学フリマのことをメインの記事にして、そこに彼らも参加する、というのが筋じゃないのか、朝日新聞様よ。
気になったのは、純文学系の同人誌を手にとると「文學界の同人誌評で取り上げられて…」とセールストークいっぱいになること。
そんなにうるさく言われると、読めません。
おもしろければ買いますので、安心してください。
私は午後に入ったのだが、絶えず入場者がいて、盛況だったと思う。
ただ、毎年出ていた海城高校文芸部といった常連が今回はない。あとで、例年より多くのサークルが抽選で落ちたと聞いた。そういうサークルは結構あったのかもしれない。
また、なんというか…妙にまったりと低位安定型になってきたというか…命がけっぽい危なそうな人が減ってるというか…(自分のことを棚に上げてるが)
冊子を鞄に詰め、妙な閉塞感も胸に抱えたまま、外に出た。
見事な秋晴れ。
そのままアキバ散策に出た。
カメラとレンズを路上に直接ぶちまけて売ってる、あやしい外人のおっさん。
同じく路上や、休日で閉まっているシャッターの前で、裸のノートPCを格安で売りつけるあんちゃん達。
どこでも売り切れのiPod Shuffleを、なぜかちゃんと在庫している末広町寄りの超安売り店。
これでもかとジャンクを積み上げる店の数々。
メイド服のチラシ配り。
アニメソングがガンガン流れるコミックやアニメの専門店。
太鼓の達人(ゲーム)に群がる見物人。
プレステ3のデモ・ムービーに見入る人々。
ある者は顔を上気させ、ある者は退き気味に眺め、野郎一人からカップル、仲間同士、家族連れまで、繰り出した人々は表通りから裏通りまで埋め尽くしている。
ある意味、こっちのほうがずっと弾けてる。
ずっと狂ってる。
狂ってる分、解放感もある。
でも、文学の狂気はこんな予定調和の生易しいもんじゃない(はずだ)。
狂気のない文学は、文学じゃねぇぜ。
あの会場にないのは、狂気。
(そのまんま自分に跳ね返ってくる。)
とうに夕焼けもあせた。ネオンが冴えてくる。
万世橋から見上げる空は、怖いくらい透明な群青。
さ、こんなところで油売ってないで、帰ろ。
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コメント
KenKenさん、文学フリマではお立ち寄り頂き、どうもありがとうございました。
ぼくは「狂気」なし、新作本もなし、の状態で出店してしまい、困ったものでしたが、せっかくのイベントですから、それを生かすも殺すも参加者次第だと思って(ダメだとなったら別の手を考えて)行かなくちゃなぁ、と思っています。
それはともかく、カナリヤさんも誘って、また飯でもご一緒しましょう。
投稿: どぜう | 2006.11.17 10:04
こちらこそお元気そうでよかったです。
新作なしですが、そういう年もありますよ。
今回は勝手に思ったことを書きましたが、あまり気にせず、おもしろい!と思う方向へ、どんどん進むことが一番じゃないかと思います。
またお会いしましょう!
投稿: Studio KenKen | 2006.11.18 00:19