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2006.11.03

ほのかな光の消滅(永沢光雄氏の訃報)

まったくなんて日だ。
文化功労者にして文化勲章受章者である白川静氏の訃報のそばで、小さな訃報(アサヒ・コム、11/2)が流れていた。
永沢光雄氏。享年47歳(!)。

***

氏の名声を一躍全国区にしたのは、インタビュー集「AV女優」だ。
エロビデオ誌に毎月掲載されたAV女優へのインタビューは、ちょっと変わったものだった。裸など出さず、エロ話もなく、AV女優になるまでの一人の女性に触れていくだけ。これを一冊の書物にまとめたもの。
よくこんな地味な記事をまとめたもんだと思うほど分厚いその本は、一般の出版社でなく、ヴィレッジ・センターというPC向けソフトや技術書を出している会社から発行された。
あっという間に読書好きの間で話題になった。

そりゃぁそうだ。
内田春菊「ファザー・ファッカー」より濃い話のてんこ盛り。教師に突進して交際を始め、やがて別れてしまったことで起きた乱調を抱え続ける女性。音大からこちらの世界へ入ってきた女性。狩猟体質でバイセクシュアルな女性。その他もろもろ。気の弱い人なら、もうお腹一杯です、私が悪うございましたぁ、と言いたくなるような話のオンパレード。それを淡々と語る女性、そして少しウェットな同調を込めて語らせる永沢氏。
貴重なのは、登場する女性全員に、必ず「女の子」の芯を見つけてしまう永沢氏の嗅覚だ。これだけですばらしい本になっている。

続編(「AV女優(2)」)も発刊された。
現在はどちらも文藝春秋の文庫に入っている。

人によっては、女性のしたたかさというものにもっと踏み込むべきだ、という向きもあるかもしれない。
でもおそらく、永沢氏の(一緒に涙を流しかねないような)態度があったからこそ、名著になったのは間違いない。これはしたたかな体験を積み重ねた女の子の芯に迫ったインタビュー集なのだから。

***

これら名著をものにしつつ、新宿二丁目周辺と、酒から離れない(離れられない)生活を経て、インタビュアーであるにもかかわらず「声をなくして」、ついにこの世からも去っていった。
こういう仕事をした人を忘れてはならない。
ご冥福を祈る。合掌。

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