宮崎誉子、やった!
ん〜、人と話をする時間をとったり、本を読んだり、葬祭があったりして、気がついたら何日も更新していなかった。
新潮11月号(10月7日発売)掲載の絲山秋子「エスケイプ/アブセント」はやっぱりおもしろかった(2篇で1対の小説なのだが、その理由はもうすぐ単行本も発売で確認していただきたい)。
文學界12月号(11月7日発売)掲載の赤染晶子「恋もみじ」の、京の繊維業の女工もなかなか切なくおもしろかった。
けど。
群像1月号(12月7日発売)掲載の宮崎誉子「三日月」。
これはなかなか素晴らしい。
宮崎氏は、マンガよりもラノベ(ライトノベル)よりも速い文体を目指しているのだろう。でも、ラノベでは絶対に得られない不思議な読後感があって、目に付けば読んできた。
三島由紀夫賞の候補(「少女@ロボット」)になり、少し長めの「脱ニート」が掲載もされたけど、書きたいことに肉薄しつつ、最後にちょっとだけ離れてしまったんじゃないのか、という感じがしていた。
「三日月」は、高校を中退し、親元を離れたくて寮のある会社の面接を受け、嘘涙を流して入った涼子の話。自分の担当となった上司、金子さんは、涼子が中退した高校でモテたカネゴンの母であり、金子さんは今まで何人もバイトに逃げられて、もうあとがないと言い、涼子にあれこれ接して家に呼ぶ。
そこでカネゴンと話をし、古屋兎丸のマンガ「自殺サークル」に及ぶ。涼子は上司としての金子さん、かつての同級生で今は自殺サークルのカネゴンとの接触が並行していき…
いままでのような現代版プロレタリアート(?)なんだけど、徐々に慣れていく職場と、しっかり結像していく金子さんの姿、逆にズレていくカネゴン、自分の次に入った新人の受け持ちを通じて描かれる、涼子のさりげない、しかし決定的な変化が快い。
一見、平凡に見えるような結末も、この変化を踏まえれば必然だ。そもそも平凡な結末かどうかより、ちゃんと書けているかが問題のはず。
これまで近づいてもつかみ切れなかった何かを、つかまえたんじゃないかな。
おめでとう、と言いたくなるような作品。
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