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2007.01.12

MacWorld Expo 2007 in S.F.

昨年から「iPhoneが発表される」「新しいiPodはビデオ再生のために画面が大きくなる」「新しいMacが発表される」「次期Mac OS X "Leopard"の詳細が明かされる」といた下馬評が続々と立っていた、年頭のMacWorld Expo基調講演。

  1. iTunes Storeでパラマウントの映画を配信開始(日本は未対応)
  2. Apple TV(一種のホームサーバー)
  3. AirMac Extreme(IEEE801.11nをサポートする無線ルータ)
  4. iPhone(iPodとインターネット端末と携帯電話の融合)
  5. 社名をApple Computer, Inc.から、Apple, Inc.に変更
***

蓋を開けてみれば、Macintoshの新モデルも、Leopardの話題もまったくない基調講演だった。
Apple TVによるハードディスクコンテンツの試聴環境、Mac/PCと接続するためのAirMac Extremeの提供により、書斎からリビングルームへの進出を図る。
また、iPhoneを提供して、デジタルコンテンツ、インターネット、メッセンジャーやメール、会話をどこでも楽しめるようにする。
Macintoshはそれらを背後につなぐコンピュータとなる。Mac以外の製品はコンピュータと通信の技術を中核に据えた、いわゆるデジタル家電となり、社名からComputerを取り去る。つまり、消費者向け家電の会社へと大きく舵を切る。

Apple IIやLisa、Macintoshの誕生から知っているユーザの中には、LeopardやMacに触れなかったことにがっかりする向きもあるかもしれない。
私自身、iPodがここまで成功を収めるまでは、家電に行きたがっているのはMicrosoftの方であり、Appleは最後までPersonal computerメーカーであり続けると考えていた時期があった。
しかし、iPod mini以降の爆発的な成功を目の当たりにして、さらに古くからのMac/PCユーザが意外なくらい保守的なのを見て、「Macユーザ中核世代の老人化こそがApple社にとっては致命的なのだから、Appleはいつか決定的な転換を遂げる」と、ここ3年ほど考えるようになった。
そしてそれは昨日、現実となった。

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iPhoneは確かにおもしろい。
2本の指でマルチタップする様子を見ていると、ジョブズがPDAのNewtonを嫌った理由が何となく納得できる。ソフトウェアキーボードだけは使いづらそうだが、スクロール、写真の拡大/縮小、Safariによるブラウジング等々、すごくスムーズ。
触ってみたくなる何かがある。
Mac OS Xを組込み向けに最適化した"OS X"を搭載している点が、本当の意味でのアドバンテージになるか。ノキアが中心になって普及しているSymbian OSと本当に渡り合えるのか(この分野ではMicrosoftは主流を築いていないが、最近は地力をつけてきたし)。いろいろ気になる点が出ている。まずは実機でお手並み拝見、だろう。

2008年アジア発売というが、GSM対応なので、日本や韓国はまず無理。むしろ中国やシンガポールの富裕層あたりに狙いをつけているのだろう。
ただ、3G(W-CDMAやCDMA2000)に対応すれば、日本などでも導入可能。
会場にソフトバンクの孫氏がいたと話題になっているし、通信部分はモジュール化して設計するだろうから、出る可能性もある(ソフトバンクはインフラが今一つ弱い嫌いがあるが、どこまで増強できるか)。
一方、ノキアが日本でスマートフォンを発売するにあたって、SIMロックフリー端末として販売し、ユーザが自ら契約したSIMカードを挿して使用する、という手段をとることも、記憶に新しい。(逆に言えば、キャリアの公式サービスを利用するための端末ではない、ということでもあるが)。
どちらにしても、3Gに対応しなければ、話にならない。

[追記]ノキアのSIMロックフリー端末とは、昨年12月25日に発売されたスマートフォン、E61
ユーザは、それまで使用していた3G端末のUSIMカードを抜いて、E61に挿入するか、USIMカードのみの契約をして、E61に挿入する。FOMAもしくはソフトバンクモバイルの3G端末のUSIMカードに対応。
利点は、フルキーボードとインターネットアクセス機能を持ち、PCで扱う添付ファイルやマルチメディアデータの閲覧などが容易であること。
ただし、i-modeメールや、S!メールには対応していないため、SMS(ショートメッセージサービス)による短文のやりとりをする。もしくは、内蔵のEメール機能やWebブラウジング機能を使って、WebメールやPCのメールアドレスを見る(この場合、自動的にメールの着信を知るためには、ユーザ自ら工夫する必要がある)。
キャリアの公式サービスにこだわらないなら、インターネットアクセスできる最小の端末として使用可能。

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Apple TVも気になっている。
Mac/PCに蓄積したコンテンツから、必要なものをApple TVの内蔵HDD(サイズは40GB)に同期して、テレビで再生する。

そのために、AirMac Extermeではより高速かつセキュアな無線LANの規格IEEE802.11nを採用し、Mac/PCとの接続も簡単にしておく。
(ちなみに、プリントサーバー機能、USB HDD接続によるNetwork Attached Storage機能を持ち、ルータとしての使い勝手も向上させたようだ。)

シンプルでおもしろい製品ラインだと思う。
ただ、Apple Remoteというリモコンは確かにエレガントだが、ショートカットキーがないため、階層式メニューをたどっていく必要がある。実際に使ってみて、本当に便利に感じるかどうか。実機で触れてみないと、わからないところだ。

日本では放映されている番組を録画する、という需要が大きい。
おそらくこれも、Mac/PCで行って、iTunesで管理すれば、Apple TVでもiPhoneでも楽しめますよ、というのがAppleからのメッセージだろう。
いやむしろ「21世紀のDVDプレイヤー」という言葉の通り、テレビはテレビ放映で楽しめればよく、保存する必要のあるコンテンツはiTunes Storeから。テレビ放映の番組もそうやって普及していくのが21世紀だ、というのがメッセージでもあるのだろう。

日本ではテレビパソコン、地デジパソコン、HDD/DVDレコーダーが売れている。録画予約が簡単で、撮った後の管理(DVDに焼く、消去する)も楽だから。(また、テレビ局やコンテンツホルダーにとって、著作権管理をやりやすくする機器や規格を普及させていくから。)
有り体に言えばApple TVは、日本の平均的なテレビユーザの生活からは、やや外れた製品像に見えてくる。
個人的にはiTunes / Apple TV流は好みなので、日本のニーズと噛み合っていくか、注目している。

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意外にも今回のアップルの発表を喜んでいるのは、Microsoft、そして(iPhoneの普及期に最前線を退く)Bill Gatesかもしれない。
PCの皇帝 Microsoftがなかなか入り込めなかった家電分野に、iPodで成功した(=日本の家電メーカーと渡り合えた)Appleが、積極的に切り込んでいった。
相前後してうまく競争し合えば、コンピュータ化する家電でのアドバンテージを2社+αで取り合う状況を作り出せるかもしれない、という期待である。
いや、それは考えすぎかな。

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コメント

ノキアのSIMロックフリー端末について、追記・補足しました。

投稿: Studio KenKen | 2007.01.12 22:18

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