マイケル・ブレッカー、逝去
テナーサックス奏者、マイケル・ブレッカー氏、逝去。1月13日、ニューヨークで、白血病のため。享年57歳。
若い、若すぎる……
日経の記事はこちら(1/14)。(朝日新聞は、1/15朝刊に写真入りで訃報が掲載されるも、アサヒ・コムでは記事無し。YOMIURI ONLINEにも訃報はなし。両社とも、アリス・コルトレーンの訃報はあるが。)
ジャズのテナーサックス奏者と紹介されるが、活動は幅広い。
日本では特に、クロスオーバー/フュージョンのバンド「ブレッカー・ブラザーズ」を兄ランディ・ブレッカー(トランペット奏者)と創設、コ・リーダーとして有名になった。
また、スタジオ・ミュージシャンとして非常に多くのアルバムでソロを吹いてきた。アート・ガーファンクル、ポール・サイモンをはじめとして、1970〜1980年代のメジャーなポップやヴォーカルのアルバムに多数参加。
実力はコルトレーン以降で最高といわれながらも、ロック寄りのフュージョン、ポップスなどで多くのセッションを持ったこと、またコルトレーンより乾いたテクニカルなフレーズを多発することから、いわゆる(モダン・ジャズを正統的に継承することを望む)ジャズ評論家からは評価されなかった時期が長かった。
注目すべきは、1979年、マイク・マイニエリ(ヴィブラホーン、コ・リーダー)、ドン・グロルニック(キーボード)、エディ・ゴメス(ベース)、スティーヴ・ガッド(ドラムス)とともに「ステップス」を結成したこと(マイケルもコ・リーダーであった)。
1970年代のトップ・スタジオ・ミュージシャン兼ジャズ・プレイヤーが一同に会し、乾いた音で奏でる新しいジャズ/フュージョン・バンドの活動は好調。
メンバーを一部入れ替えて、電子管楽器スタイナー・ホーンを吹くマイケル・ブレッカー、MIDIヴィブラホーンを叩くマイク・マイニエリを双頭とする電子+アコースティックのバンド「ステップス・アヘッド」に変身。まったく新しい音響を提示した。
東京五反田でのヴィデオ(DVDも出ている)は、1980年代のフュージョン・シーンにおける、最高のライヴの一つと讃えられている。
ここで吹いていたスタイナー・ホーンこそが、後にAKAI professionalから発売されるEWI (Electoric Woodwind Instrument) の前身。
マイケルがいなければ、EWIはここまで広まらなかったろう。
1987年、満を持して初のリーダー・アルバムを発表。ストレート・アヘッドなジャズから、ややフュージョン色のある曲まで、実に幅広い音をパレットにぶちまけたようなアルバムにより、ジャズとフュージョン双方のシーンから支持される。
これをきっかけに、文字通り「コルトレーン以降でもっとも影響力のあるテナーサックス奏者」とうたわれるようになる。2003年までリーダー・アルバムを8枚発表。
その間、ブレッカー・ブラザーズを数年復活させたり、ハービー・ハンコック、マッコイ・タイナーら重鎮とセッションするなど、まさに八面六臂の活躍だった。
2005年、血液ガンを公表。予定をすべてキャンセルし、闘病生活に入った。
その後、回復に向かったようで、飛び入りでステージに参加したり、EWI4000sの発売後に試奏する動画が公表されたりしたため、いつか活動を再開するのだろうと思っていた。
ジャズ、フュージョンの両側をまたぐ巨人テナーが、こんなに早くなくなるなんて。
もう、あの音が聴けないなんて。
いまはとにかく、あの精確かつ豪快、しかしなんともいえない包容力と暖かさがにじみ出ていたテナーやEWIを聴きながら、その純な音楽魂に感謝を捧げたい。
合掌。
[トラックバック]
・コンテナ・ガーデニングの「マイケル・ブレッカーさん、逝去」(2007.01.16)
・午後のアトリエ + atelier Coju blog + の「マイケル・ブレッカーの死」(2007.01.28)
・kumac's Jazzの「Michel Brecker『Tales From The Hudson』」(2007.02.19)
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コメント
トラバさせてくださいね。
自分も、彼をあまり評価しなかった一人です。
でも、今は違います。
時、遅しですね。
投稿: kumac | 2007.02.18 12:21
管理人のKenKenです。コメントありがとうございます。
確かにマイケルは理解されにくい傾向もあったかもしれませんね。
90年代のアコースティックな演奏は、EWIを使ったフュージョンとはまったく異なるからこそ、いい演奏だったと思います。
ところで、トラックバック、来ていません。関係深い記事のようですし、お送りくだされば、公開承認いたします。
投稿: Studio KenKen | 2007.02.18 13:44