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2007.01.19

もう読んだもん

午後7時頃、帰路に着いた。
電車は当然満席だが、思ったほど混んではいない。イヤホンを耳に目を瞑ったり、文庫本に入り込む女性が目立つ。会社帰りのOLが多いのだろう。

私も立ったまま、鞄から本を取り出した。珍しくブックカバーをかけていない。
川上弘美の「真鶴」は、白い箱入り。中は高島野十郎の静物画がブックカバーのような装丁。書店でもカバーをかけてくれなかったし、きれいなので、箱から出して、そのまま持ち歩いていた。
しばらく読み耽る。短くたゆたう文章が、後半に入って張り詰めていく。短い文だから強い、寄せては返す昂ぶりが。
少し鼓動が速くなったところで、本を閉じた。アナウンスなど聴かなくても、最寄り駅に近づくタイミングくらいわかる。
同じく降りる準備を整えて席から立ち上がった女性が、あ、と顔を輝かせた。

あ、真鶴。読んでるんだね。いまごろなんだね。私、もう読んだもん。

そんな顔を一瞬して、すっと視線を外した。こちらもついと出口に向かった。
扉が開くと、意外に寒くない。皆、足下の先だけを見て、黙々と隊列を組む。
それにしても、既に読み終えた本を見かけると、誇らしげな顔になる人がいるのは、なぜだろうね。

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