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2007.02.12

神保町に赴く

ジュンク堂あるいは郊外型大規模書店が増えたためか、神保町で書店をいくつも廻るより、大規模店一ヶ所ですべてを済ませる人が増えているような気がする。

そんな今、あえて神保町に行く理由。
三省堂、書泉、東京堂といった書店がそれぞれ独自の棚構成を持っていること。並びが違うと、本の印象が少し変わるため、思わぬ本を手にする可能性が上がる。
それに、小規模かつ専門的な古書店が密集しており、品切れや絶版書も探せる(こちらは運次第という面もあるけど)。

さらにもう一つ。
一人で気軽に入れる喫茶店が点在し、安価でうまい食堂も多数ある。
本屋を歩き回り、疲れたら座ってお茶を飲む。一人で本を読みながらでも、数名で歓談してもいい。食事もできる、しかもリーズナブルに。

まぁいわゆる「本と珈琲の街」というヤツだ。
でも、最初に行くようになった頃、まだコーヒーを飲む習慣はなかった。

***

小学生の頃に親に連れられて以来、この街に足が向くようになった。その頃(1970年代)、三省堂はまだ3階建てだった。
中学に入り、お茶の水駅のあたりを見回しながら、思った。新宿より高い建物が少なく、見晴らしがいい。この空の広さと、なんだか安心するのどかさが続くといいと。

もちろん、街の発展を考えれば無理であることは、明白だった。
実際、お茶の水駅周辺は1980年代に日立などが高いビルを建て、2000年前後から病院も明治大学も大きくなっている。
駿河台下(神保町エリア入り口)も、三省堂が1980年代に今のビルになり、2000年前後からは靖国通り沿いの木造モルタル造り古書店群がビルになったりする。
一方で、専門古書店が雑居ビルやマンションに店を構え、インターネット通販を利用して販路を複数持つケースも増えている。

靖国通りの南にあった書籍・雑誌の取次村は、大規模再開発で高層ビルに変わった。戦前からある喫茶店のキャンドルなども、これに伴って移転した。
一方で、書泉グランデ裏手にある喫茶店のミロンガやラドリオは、昔の面影を残している(ミロンガは1990年代に経営者が変わったようだが、建物はそのまま)。

バブルの影響を極端には受けなかったこの地域も、建物の老朽化や世代交替は避けられない。
いまは移行期なのだろう。ずっとレトロでもないし、かといってピカピカになったわけでもない。
これからどう変わっていくのか。

***

ところで、この街の魅力は、いわゆる「本と珈琲」だけにあるんじゃない。

本、レコードやCD、スポーツ用品、楽器など、生活に潤いをもたらすもの、遊びを扱う店があちこちにあって、わざわざその間を周遊する。
おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさ。多少のムダを、余裕と楽しみに変えてしまう空気。

中学の頃に感じた、のどかでいい雰囲気とは、この香りなんだと思う。その象徴が「本と珈琲」なのだろう。
逆にいえば、街の表情が少しずつ変わっていっても、この遊びの空気が残っていれば、きっと神保町らしさは続いていくんだと思う。

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