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2007.03.13

よく出来ているのに

私はいわゆるクラシック音楽とされるジャンルの音楽が好きだ。
(それより、クラシックと言いながらいろんな時代の音楽を含むのって、どうよ。本当の意味でのクラシカルって、18世紀後半の古典派だが、一番演奏されるのは19〜20世紀前半だし。もっといい呼び名はないものか。)

だからといって、ポップス、ロック、ジャズ、ラテン(なんて大雑把なんだ!)、民族音楽、邦楽などを聴かないわけでもないし、ましてや格下にみなすこともない。
ただ、時間は有限なので、自然に響きの質が肌に合うジャンルを多く聞きがちなだけ。
他のジャンルだって楽しい。

***

文芸にも、エンターテイメントと純文学、という区別はある。

あるにはあるが、その区別は実際のところ、とても厳密なわけではなかろう。
(純文学はちょっとばかり毒気や狂気が多めかもしれんが、エンターテイメントだって毒気が入ってるし、純文学にもやわらかく暖かく無毒ながらすてきなものだってたくさんある。)
私も両方を楽しむが、やはり時間は有限だし、雑誌で評論を読めるのは純文学系雑誌に限られるので、そちらを手に取りがちなだけ。

マンガは、基本的にエンターテイメント、サービス精神旺盛だ。
エンターテイメントだから、読み手を楽しませるための手練手管を、そうと気付かせないように、あるいはそうとわかっていても思わず引き込まれるように、張り巡らせたりする。
あるいは、書き手自身が自らワクワクし、その躍動が伝わるように描いたりもするだろう。

でも、パターンをうまく使い、劇的でちゃんとした格好の作品に仕上がっていても、それが本当におもしろいとは限らない。

***

安野モヨコ原作で映画化されて話題の「さくらん」。(初版はだいぶ前の2003年。)

映画は観ていない。
原作は…

第1話を読んで、ほぼ最後が予測できたとしても、表現が徹底していておもしろいなど、見どころがあればいい。
けど、これはどうだろう。
当時の新吉原の様子をよく描いてはいる。ただ、それ以上をほとんど感じられない。よく出来てはいるのに、突然セリフが説明的になったりして、時々さめる。
逆に、映画の原作としては、色をつけやすいのかもしれない、とも思う。

同じ作者なら、乙女対象の「シュガシュガルーン」、これはおもしろい。
大人の書き手が、子供読者に対して、責任を持って毒気をチビチビ混ぜつつ、世の中の諸相を伝えようとする瞬間があって、ずっと読み応えがある。

そういえば19世紀の小説「レ・ミゼラブル」や「巌窟王」などは、作者が世界を描きながら、読者に毒気を少しずつ注入して、世の中の諸相を教える、という風情がある。
これらは純文学とエンターテイメントどころか、文学・文芸とジャーナリズムの区別も曖昧だった頃の作品だろうが、エンターテイメントの王道とはこうして作者が語りで教える、という部分を含むのかもしれない。

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