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2007.08.15

硬い夏の背中

数日前の夕暮れ時、外で風を浴びればどうにか過ごせるようなので、オープンカフェ、というよりカフェの外の席にいた。いろんなことをぼんやり考えつつ、時々は手帳にメモして、またボーッとして。風が体温を吹き飛ばすと、つまらない考えも一緒に飛んでいきそうで、気持ちいい。

ふいに視野の隅で白が動いた。
カップルが立ち上がっていた。クリーム色のワンピースに白い肌が映え、とても姿勢のよい女性が、店先のちょっとした芝生に出た。
ここはキャッシュ・オン・デリバリーではない。チェックのシャツにジーンズをざっくり着こなす男は、会計をしに店内へ進んだ。
それぞれ20代半ばくらいか。

あんなに生き生きと微笑んでいた彼女は、背筋を硬くして、立ち尽くした。ちょっとため息をつき、向きを変えた横顔は、頬がさらに硬い。
薄く茶を入れたセミロングの髪、淡い化粧。
クラシカルなワンピースに、同じクリームのサンダル。
無駄なく伸びやかな手が、バッグを握り直した。
清楚で端正な姿のすべてが、キュッと緊張してる。
たいていの男は振り向くだろうあなたが、そんなに構えるのはなぜ。

男が戻ってきた。
彼女はすでに、身体を緩めていた。ふわりと身体を傾けて、見上げる。
とびっきりの笑顔で。
店からの照明が、その横顔をくっきり浮かび上がらせる。

男は財布をしまいながら二言ほど交わすと、歩き出した。
彼女も並んで歩き出す。
腕をとることもとられることもなく、付かず離れずで。
時々彼女は笑顔で見上げる。
淡く応じる男も、少し緊張している。
二つの背中が小さくなっていく。

育ちのよさがそのままにじみ出るような彼女。この場を楽しくとりもちたくて、おそらく最高の笑顔を放とうとしている。
男はしかし…話題が合わないのか。もっと派手な子が好きなのか。むしろ、この鉄壁の笑顔に困っているのか。

このまま進めばどうなるか、二人はそれぞれに感じている。
その予感を持ったまま、でも、恋とはもともとそういうものと、おそらく踏み出すのだろう。
それぞれの背中の緊張が解けた時、二人は打ち解けて開き合うのか、なんか違うと思うのか。
なんだか80年代のような背中に、こんな古典的な夏もあるんだと、タイムスリップした気分である。
気がつくと、夕暮れの気配はすっかり消えていた。

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