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2008.01.03

マンガ2007年

2008年もよろしくお願いいたします。
(昨夏、祖母が亡くなり喪中なので、新年の挨拶は控えさせていただきます。)

さて、遅れてしまった2007年のマンガを振り返る企画。
年末は肩凝り、新年はたまった本やビデオだのを消化しつつ、仕事も準備する中、箇条書きでいってみます。

  • 青年誌で講談社の存在が圧倒的。モーニング(「へうげもの」「チェーザレ」「きのう何食べた?」「ひまわりっ」など)、イヴニング(「もやしもん」「少女ファイト」など)、アフタヌーン(「ヒストリエ」「ヴィンランド・サガ」など)のそれぞれが、挙げた代表作以外にも厚みのあるラインナップ。加えて、少年マガジンは「さよなら絶望先生」がアニメ化された。講談社の作品群に何となく共通する、ちょっとひねりのある熱さが沸騰し続けた。
  • オノ・ナツメ(「GENTE」「さらい屋五葉」「Danza」)よしながふみ(「フラワー・オブ・ライフ」「大奥」「きのう何食べた?」)が、ここ数年尻上がりの絶好調。傾向のまったく違う作家だけど、食と、人との距離と、ジェンダーに関わる問題、つまり人の生を扱って、右に出るものなし。どこまで上り詰めるのか?!
    ちなみにこの二人、昨年は揃って講談社で連載を始めた。講談社、おそるべし。
  • 「ひまわりっ」が好調な東村アキコ。「きせかえユカちゃん」やヤングユー連載「ゑびす銀座天国」などで注目してきたが、順調で個人的にうれしい。
  • 連載中の長編で大注目として、五十嵐大介「海獣の子供」。小学館のIKKIに連載、現在単行本は分厚いのが2巻まで。前作「魔女」より大きな世界を、絵の力と、物語の力ががっちり噛み合わせて突き進める。震撼しつつ、祈りつつ読むような作品は久しぶり。
  • ヤングレディスが静かな傾向の今、吉田秋生「海街diary 1 蝉時雨のやむ頃」こそ昨年の女性もので注目すべきか。単行本はまだ第1巻のみだが、第1話からして既に名作。様々な年齢層の、様々な立場の人間が集まる葬儀場において生じるドラマの濃密さ。
  • 吉田秋生の連載は、小学館の月刊flower。同誌の地味だがクリティカルなヒットが、小玉ユキ「光の海」「羽衣ミシン」。この雑誌は他にも岩本ナオなどの人気作家を抱える。すると、少女・ヤングレディスものでは、小学館おそるべし、というところか。
  • 「のだめカンタービレ」は2006年後半から2007年前半で、ブームのピークを迎えたようだった(音楽祭「ラ・フォル・ジュネ」との協賛、アニメが完結)。でも、原作マンガはそういったイベントとは関係なく、強く深くヨーロッパ篇を続行中。感情の振幅が深く、激しくなり、これからのクライマックスが楽しみ。
  • ところで、あるカフェにて、高校生くらいと思われる女の子が、マンガの貸し借りをしていた。「これ、よかったでしょ」と言うなり、その子が涙ぐみ、借りたマンガを返した子も同じように涙ぐんで、手をとりあった。
    それが椎名軽穂「君に届け」(連載は別マ)。びっくりして、マンガ喫茶で読んでみた。なるほど、友情に悩み、夜も眠れぬ時を過ごす年代の子にとって、地味でクラスに受け入れられにくい爽子が人間関係を開いていく過程は、確かに心打つもの。あまりにストレートな少女マンガでも、まだ仕事はたくさん残っている、と納得させてくれる。
  • 西原理恵子「毎日かあさん」の第4巻が出た。この巻には、早世した夫の鴨ちゃんのことが随所に出てくる。日常のデフォルメの天才、西原の真骨頂は、こういう時に発揮されるのがすごい。最後の子供たちのところは、うますぎる。
  • 大御所という意味では、久々の単行本になる大島弓子「グーグーだって猫である」第3巻。手術で生死を深く見つめた作者らしい徹底した言動は、猫と人の神様みたいで、こちらも西原とは別の意味で、日常のデフォルメの天才が衰えていないことを立証し続けている。
  • エンターブレインの雑誌コミックビームは、個人的にはアフタヌーン(講談社)などと並んで、マンガ文化を引っ張る雑誌の一つ(他はアックス(青林工藝社)とかか)。「コーヒーもう一杯」なんて他の雑誌には載らないだろうし。大型連載の「エマ」が外伝に移り、いましろたかし「盆堀さん」が終了してちょっと静かになった印象だけど、「イムリ」「アベック・パンチ」など、相変わらず珍妙な作品が好調な上、三遊亭円朝「真景累ケ淵」が「累」として漫画化、第1部が完了した。古典だと、短期集中で江戸川乱歩「パノラマ島奇譚」の漫画化も。
  • 2000年あたりと比べると、連載、単行本ともに作品世界が豊かになってきたかも。その一例として、福満しげゆきのメジャー進出と単行本化(モーニング、つまりまたしても講談社)。ちゃんと本屋に平積みされる部数が出ているのが、なかなかうれしい
  • 注目しつつも未読のものとして、地下沢中也「預言者ピッピ」、菅野文「オトメン」、槙村さとる「Real Clothes」、柴田ヨルサク「ハチワンダイバー」、武富健治「鈴木先生」ほか。2007年は数をこなしていないかもな…。

全体として、ノリのよさだけよりも、厚みのある話がまた増えてきた印象がある。
また、歴史や古典を扱うものが増えているようだ。
ゲームやアニメが複雑な世界を構築しても、ちゃんとユーザがついてくることなども影響しているのかな。
いやむしろ、新しい世界を見たい時には、歴史を尋ねるのが世の通例であるところからすると、かつて演劇やオペラや小説が担ってきたそういう役割を、マンガも負っているのかもしれない。

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