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2008.01.28

エルゴソフト、egwordおよびegbridgeの事業を終了

これは触れないわけにはいかない。

長らくMacintosh用のパッケージソフトを開発・販売してきたエルゴソフトが、この1月28日をもってパッケージソフト事業を終了する、と発表した(公式プレスリリースはこちらに)。
開発を続けてきたソフトウェアは、日本語入力ソフトegbridge Universal 2および日本語ワードプロセッサーegword Unuversal 2の2本。
サポート業務は来年の1月まで、オンライン(掲示板)で続けられるという。

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リンク先のプレスリリースにあるように、エルゴソフトのパッケージソフトの歴史は1984年のEGWORD以来24年である。
当時はまだ日本語版のMacintoshが存在せず、エルゴソフトが日本語入力からワープロ本体まですべてをEGWord上で提供していた。当時の国民的PCであったNECのPC-98シリーズでも、単文節変換が主流だった日本語入力/ワープロ市場において、複数の文節を句読点入力で変換する実用システムを作り上げていた。

その後、System 6をベースにした漢字Talkという日本語OSが提供されたため、日本語入力ソフトのEGBRIDGEと、日本語ワードプロセッサーのEGWORDに分割して提供されるようになった(本来の姿になったというべきか)。
Appleにも、そしてユーザにとってもかなり幸福だったSystem 7時代は、漢字Talk 7.1上でEGBRIDGE、ATOK、VJE、Katanaなどが日本語入力ソフトとして販売された。シェアが10数%に達したMac市場は、ソフトの選択肢も意外に豊富な時期があった。
System 7.5の頃に不安定さを非難され、新OSのCopland開発に失敗してからは、Mac市場がジリ貧となり、パッケージソフトを事業とする会社にとって厳しい時代だったはずだ。それでも、エルゴソフトは提供し続けてきた。
その後、NeXTSTEPをベースにした新OS、Mac OS X 10.0への移行をなんとか乗り切り、10.3 "Panther"の頃から再び、少しずつだが対応ソフトが増えてきた。この頃も、エルゴソフトは最新OSに対してすばやくEGBRIDGEを提供し続けている。
安定したOSとして名高いMac OS X 10.4 "Tiger"を経て、昨年10月には10.5 "Leopard"がリリースされた。iPodやiPhoneとともにむしろ存在感が増してきたのが、昨年後半からのMacintosh。

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ただし、日本語入力やワープロを、あえて買う人は少なくなっているのかもしれない。
たとえば、パッケージソフトを買ってインストールする、という機会そのものが、MacintoshでもWindowsでも減り続けている。
多くの人々は、付属のソフトをまず使う。辞書を鍛えればどうにかなるMac OS X付属のことえりで、日本語入力を済ませる人は多いはずだ。
ワープロをわざわざ買わなくても、シェアウェアのエディタであるJEditやLightWayText/iTextなどでかなりのことが出来る。(LightWayTextは縦書き入力も原稿用紙入力も可能である。)
それに、Windowsユーザとやりとりすることがあれば、迷わずMicrosoftのOffice for Macか、Word for Macを手にするだろう。

一方、エルゴソフトだって歩み続けていた。
最新のegwrod Universalシリーズは、Mac OS Xのプログラミング用フレームワークCocoaを採用した、縦書き可能な日本語ワープロとして生まれ変わった。
ただし、実はEGWORDシリーズ(漢字Talk 7.1からMac OS X 10.3 "Panther"の頃まで続いた)よりも機能的に後退している。
文字組版はCocoaベースで美しくなった。横書きだけでなく、縦書きでも、文字組はほんとうに美しく、読みやすい。私は、このために使用してきた。
一方、図や表を含む複雑なレイアウト、袋とじ印刷などについては、仕様そのものを変更して、新しいページレイアウトや文書形式とした。また、禁則文字のルールを自由に変更できない。だから、従来の文書を完全な形では移行できない。

このため、egwrod Universalシリーズにアップグレード後も、旧EGWORDシリーズを使い続けていい、というライセンス形態になっていた(通常はアップグレードすると、旧版の使用権を失う)。
その旧EGWORDシリーズが、最新のMac OS X 10.5 "Leopard"では完全に動作しない状況になったという(Mac OS Xの内部の枠組みが変わり続けているためであり、まぁこういうことも起きるのがソフトウェアの世界だ)。

市場の成長が大きく見込めないし、上記のようなことが起きる。ことえりやWord、シェアウェアでほとんどの作業が解決する状況になったことをもって、おそらく事業終了の頃合いと判断されたのだろう。

***

Macのパッケージソフト事業が厳しかったと思われる1990年代後半を生き抜いてきて、市場がやっと少し膨らみ始めた今になって事業継続を断念するとは、皮肉なものだ。
しかしまずは、24年間よく提供し続けていただいたと、賛嘆を送りたい。
せっかくなので、ここでのノウハウを、AppleのことえりやiWork(←縦書きが出来ない)に売り込んでいただきたいくらいである。

[追記]
開発、販売や広報に携わっていた方々には、心からの感謝とともに、次の場でもすばらしい活躍になりますよう祈念申し上げます。(2008/01/29)

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Cocoaを飲んで、ほっとして「事業撤退」(2008/01/29)

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» 事業撤退 [Cocoa を飲んで、ほっとして。]
当事者である私は本当はこんなところで仕事のことは書けない決まりがあるのだけど、大 [続きを読む]

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