本屋大賞は5年経ったのね
各種出版物に関する賞は、多くの場合、出版社か、出版社の関わる業界団体が主催して行われている。
それに対して、本屋が一番勧めたい本、という趣旨で設立されたこの賞は、第1回の年に小川洋子「博士の愛した数式」、という幸運にも恵まれ、多いに注目された。(ちなみに、あの年はいろんな意味で当たり年だったのかもしれない、入賞作品が軒並みよく読まれていた。)
いや、悪い意味で言っているのではない。だって、違う観点からの表彰があっていいのは当然だし、うまくぶち上げなければ収縮してすぐに終わってしまう。最初にロングセラーを約束されるようないい本が回ってきて、また作家本人も受賞をひどく喜んだコメントが出たことで、この賞は注目され続けている。
「博士の愛した数式」は、純文学の割にはよく売れる、という枠組みを超える力を、この賞を通じて獲得したのかもしれない。それまでの小川作品は名作だが割合地味で、ベストセラーになる傾向はあまりなかったはず。だからなのか、この受賞は多くの読者が喜んだ(とはいえ、本屋大賞をとった段階でもかなり売れていたのも事実)。
ただ、その後の受賞作の多くは、割と多くの読者が普通についてベストセラーになる作品から、人気争いの末に受賞するケースが多いように感じられる。
それが悪いわけではないし、第1回のように、地味に読者がついている作家が、バーンと売れるようになる、というケースがそうそうあるわけでもない。
けれど、本のプロの大賞、というならば、別枠で「今年の注目賞」みたいな形のクローズアップがあってもいいんじゃないかな、そろそろ5周年なんだし。
5周年を記念してリストアップされた「この文庫を復刊せよ」はおもしろいよね。
毎年これじゃなんだけど、こういうクローズアップ企画、何らかの形で続けないのかな、とも思う。
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