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2008.06.24

iPhone 3G、価格発表

ソフトバンクから、iPhone 3Gの価格が発表された。
たとえば、ケータイWatchの記事(6/23)など。

24回払いの割賦販売を申し込むと、メモリ8GBモデルで2万3,040円、同16GBモデルで3万4,560円となり、WWDCのS.Jobs基調講演の発表相当の価格となる。
iPod touchが売れなくなるのではないか、という価格。
また、Windows MobileやSymbianによるスマートフォンも驚きの価格。

もっとも、これは割賦販売時の月々1,920円の特別割引適用の価格であり、それを除いた価格は、8GBモデルで6万9,120円、16GBモデルで8万0,640円。
やはり元の価格はそれなりに高く、特別割引とはキャリアが負担するインセンティブ。

最初のiPhoneの端末価格はiPhone 3Gより高かったが、米国でのパケット通信定額としては比較的廉価な料金プランを設定した上で、それをメーカーのアップルと、キャリアのAT&Tが分け合う形をとった(念のために、日本では未発売)。これはレベニュー・シェアと呼ばれる。
今回のiPhone 3Gは、端末価格を安く設定して、より幅広い普及を狙う。本来の価格との差分はキャリアからアップルへと支払うインセンティブとなる。その代わり、毎月の通信料金は、そのままキャリアがすべて受け取る。

たとえば、米国のAT&Tでは、iPhone 3G専用の通信料金プランは、最初のiPhoneより10ドル/月、高くなる。3Gになるからだが、これを残念がるユーザーは、海の向こうでは多いと聞く。
3Gの普及がより進んでいる日本では、ソフトバンクがパケット通信定額プラン5,985円を提示してきた。ドコモやauに対抗できる、かなり戦略的な価格。インフラ先進国、日本ならではの価格かもしれないが、一方で2GHz帯のみを使っているソフトバンクがどこまで安定したハイスピードサービスを提供できるかも、問われることになる(ドコモやauは複数の周波数帯を使っている)。

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ところで、日本ではここ数年、キャリアがばらまくインセンティブを利用して0円ケータイ、1円ケータイなどを発売することが、不毛な開発サイクルになってきているので止めよう、という方向に舵を切った(総務省の主導もあったが、様々な話し合いを経て決まっていったこと)。
たとえば、ドコモが2007年の905iシリーズ以降、端末価格を上げ、分割払いで支払いやすくする、という方向をとったのは、わかりやすい例。他のキャリアも同じような施策をとっている。

ソフトバンクがドコモより先にiPhoneを販売できたのは、インセンティブ廃止が広がる中、トップの意思決定で「これだけは特別なモデルとしていこう」と決断できたから、かもしれない。
これが大きな支持を得るなら、やはりインセンティブによる販売モデルも必要なんじゃないか、という話になってくる。

では、インセンティブがあったほうが、どのメーカーもラクになるのか。
三菱が携帯電話開発から降りたし、三洋は携帯電話事業を京セラに売却するし、ソニーエリクソンも国内モデルの出荷を抑制するなど、インセンティブ販売終了に伴って、事業整理や統合が進みつつあった。
ただし、インセンティブが続いたとしても、売れるモデルと売れないモデルの区分が始まれば、望まない形で淘汰される可能性もある。

それじゃぁ、iPhoneは売れるのだろうか。
もちろん熱狂的なユーザは並んで買うだろうけど、最初は様子見、という人も多いはず。
ソフトバンクは、アップルファンのように忠誠度の高いユーザを迎え入れるために、あえてリスクをとっているようだ。
それよりむしろ、iPhoneのどこが評価されるかが問題。

***

iPhoneのことを「iPodが融合した、音楽機能を持つ携帯電話」と紹介する記事が、一般紙にちらほら出ることがあるが、これはそういうモデルではない。

組込み機器として出発した携帯電話は、第2世代で大きく普及したが、その中身はたとえば木造一戸建てに増改築を繰り返して開発がタイヘンになっていく一方で、バグも増えた。
3G(第3世代)に切り替わる時、それまでOSとして使ってきたμITRONから、SymbianやLinuxなどに切り替えて、新しい周波数帯域での経験を積むことで、安定した通話・通信ができるようになってきた。

そろそろ次のフェーズに入ろうか、という頃合いに、Symbianの成功と似たラインを目指していた、MicrosoftのWindows Mobileケータイが、少しずつ普及し始めてきた。
そこでいきなり「携帯電話を再創造する」と宣言したのがiPhone。
Windows Mobile、iPhoneに共通するのは、超小型機器専用の組込みソフトの開発から、よりPC的な、高機能で他のデバイスとの連携に長けたプラットフォームへの転換期に、大きく伸び始めた、ということ。

Symbianは通常の携帯電話から、高機能なスマートフォンまでをカバーするOSとしてやってきただけに、こうしたPC界の巨人達より一日の長はある。
ただし、よりPCに近く、より一般的なインターネットに近く、しかもPCより小さくて使い勝手のいいデバイスが望まれており、それを目指してMicrosoftらが出てくれば、Symbianとしても新機軸を打ち出す時期だった(それが「そろそろ次のフェーズ」という意味)。

まったく新しい設計であるiPhoneの中身は、Mac OS Xと共通のカーネルやAPIを持ち、UI(ユーザインタフェース)に関する部分は専用となる。
PC/Macや周辺機器への連携が最初から視野にあり、うまく普及すれば、iPodの時のような、新しいビジネス生息圏を生み出すことになる。それはさらなる普及と循環をもたらすかもしれない。
Mac OS X専用だが、グラフィカルな開発ツールも用意した。
しかも、MobileMeというサービスまで打ち出している。これはPC/Mac/iPhoneの情報を、どこかで更新すればすぐに他の機器に反映されるようになる、インターネット経由の同期サービス。つまり、ケーブルをつないで同期を待つ、なんてことは必要なくなる(はず…まだサービスが始まっていないわけだが、発表された内容からは、そのようなことになる)。

今の世の中、かなり多くの人が、仕事や生活でパソコンを使っている。それと同じデータを見られるサービスが用意されている携帯電話が登場し、その便利さを見せられて、さらにそこに人が流入していったら…
となることが、他の多くのメーカーやOS提供会社にとっての脅威。

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ただし、日本では、PCなどを持たず、携帯電話だけでメールとサイト閲覧を行い、同期など必要ない、という人々もたくさんいる。いや、むしろそういう人々のほうが多いくらいかもしれない。
そういう人々にとっては、iPhoneが見やすく、楽しく、使いやすいと感じるかに、かかってくるだろう。PCがこわい、という人にも訴求力があるかどうか、ということだ。

こればかりは、発売して数ヶ月〜一年ほどを経ないとわからないだろう。
その間、どのように受け入れられていくのか。
7/11の発売ではなく、その後こそが注目、だろう。

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