絶対移動中の前号(vol.9 オタクライフ)について
最近は掲載誌の感想をまったく書いていなかった。
特に他意はないのだが、多忙に流されて書いてこなかっただけなのだが、前号のvol.9から少し変化が出てきた。
相変わらず短編・掌編・マンガ/イラストなどの創作集だが、vol.9からは評論が掲載された。
志方尊志「あなた(オタク)は死なないわ、わたし(おたく)が守るもの −−ライトノベルの戦う主人公タイプ分析」である。
おたく/オタクの歴史的な流れをざっと概観してから、オタクが読む中心的な活字であるライトノベルに焦点を当て、主人公のタイプ分析、文章の人称の問題に移り、最後に小さな問題提起をして終わる。
絶対移動中が創作中心の冊子であるためか、いわゆる評論・批評本の作法に満ち満ちたものというより、平易な記述からオタクの変遷と今後の問題をやんわりと浮かび上がらせる手法は、コラム的な読み味を持たせつつも、内容は本格的な方向を指向するもの。
こういう評論が掲載されるような幅が出てきた、というのが変化のポイントの一つ。
一方、「オタクライフ」というテーマによる様々な創作は、自分のものも含めて、全体にややこじんまりとした印象だったかもしれない。
とはいえ、各作者の意匠をこらした読み物ばかりである。
数号続けてきた雑誌形式として上昇路線にあったのだが、オタクライフというハマり過ぎたテーマとともに、ちょっと落ち着いたような印象を個人的に持った。
ただ、参加者や読者と話をしてみると、こういう印象はむしろ私個人のものらしく、みなさんもっと肯定的であり、むしろ軽妙でいいものが多かったのではないかという声も聞いた…
個人的な感触としては、次の新刊 vol.10「妄想×少女」のほうが緊張感あるものを寄稿できたと思うし、相変わらず評論も掲載されるので、仕上がりがいつも以上に楽しみだったりする。
多くの方の手に取っていただきたい。
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