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2012.04.02

東京堂書店の気持ち良いリニューアル

東京はいつもどこかで工事をしたり、建替えたりしているから、気がつくと街の風景が変わっていることは多い。
でも、ここ15年ほどの神保町の変わりようは、かなり大きいかもしれない。三省堂、書泉グランデ、東京堂書店といった大型書店もあるが、木造モルタルの古書店が延々と並んでいた街並みは欠片が残っている程度になった。
靖国通り沿いの古書店や古いビルなどがどんどん変わり、すずらん通りもかつての店はかなりなくなった。土日に以前ほど人が集まって来ない、店主高齢化や後継者難で閉店などいろいろあるのだろうが、かつて強力なオタク的書店だった書泉グランデから、コンピューター関連書籍がざっくりなくなったこと自体、あの街の変わりようをよく表している。

東京堂書店がリニューアルのために閉店していたが、3月30日にオープンした。建替えたわけではなく、店舗の内装を大幅にリニューアルしたものだという。
せっかく会員になっているのだし、行ってみた。

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入り口のカフェが目についた。セルフサービスのよくあるタイプだが、小腹が減ってまずそこで休憩。カレーが480円にびっくり、それとブレンドを頼んでみた。会員カードを出すと、ここでもポイントがつく。
ブレンドはいやな味がなく、飲みやすくも、スタンドカフェらしからぬ濃さ。カレーは少なめだが、しっかりした味で、両方とも満足度が高かった。サンドイッチやお菓子類も充実している。また、一階の店舗寄りの席には、作家によるセレクション本棚があり、手に取って読めるし、その在庫コーナーもある。カフェは書店側を向いていないので、コーヒーなどのにおいが本にしみつくこともないようだ。
さらに、2階と3階の窓際もカフェの席になっていて、1階の片側のカフェ用階段から行き来できる。こちらは書店ときっちりガラスで間仕切りされている。専門書をゆっくり選びに来た客とかち合うことは、まずない。カフェ3階は喫煙席だが、階段の入り口にしっかり扉があって、煙草が本や他のフロアに影響しないようになっている。
いわゆるブックカフェとは言えるが、書店と空間を共有していて、においや煙で本が大丈夫か気になるという人でも、これなら納得できるのではないか。

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肝心の書店は、シックな色遣いと照明で、落ち着いた空間になっていた。いたずらに明るい駅前書店とは一線を画する、じっくりゆっくり選べる書店を目指していることが伝わってくる。

棚を全体に高くして場を確保し、棚や柱の空間に小さな平積みをたくさん用意することで、いわゆる「東京堂の棚」をちゃんと作り出していた。
(人によっては、講談社文芸文庫や平凡社東洋文庫の在庫量が減った、といった具合に、自分がそこでよく買っていた銘柄が減ったことを残念がる向きもあるやもしれん。ただ、その代わりに美術分野で写真集や写真論が前面に扱われるようになったり、文学の研究所の平積みが見やすいところに来るようになったりと、いろいろ工夫も凝らされていて、私は全体的に好感を持った。)

また、分野横断の「東京堂の1階平積み」もちゃんとあった。これまでよりややポップに振っているようだが、2階と3階に上がれば文学や人文関連専門の平積みもちゃんとあり、安心できた。
東京堂は通常、通販のみのSUREの書籍、なかなか在庫がない専門書などを置いてあるので、本屋に来る楽しみが何かしら見つかる。

ちなみに、斜め向かいの東京堂書店ふくろう店もリニューアルし、話題の書物やベストセラー、マンガ、実用系雑誌などはこちらに移っている。ちょっとした買い物ならこちらでも間に合うので、ぱっと手近に何か読み物を買うことにも対応していた。なかなかおもしろい使い分けだ。

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つまり、着いたらまず何か食って一服、おもむろに店内を廻って本を漁り、会計を済ませたらもう一服しつつ買った本に目を通す、などということが出来て、うれしくもキケンきわまりないステキな場になっていた、ということ。

東京堂の隣には数年前からドトールがあるのだが、東京堂カフェとはコーヒーの味も食べ物もかぶらない。うまい具合に棲み分け出来るのではないだろうか。

何より、久しぶりに混雑し、レジにひっきりなし客が足を運ぶ東京堂を、久々に見ることができて、うれしいのだった。

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