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2012.07.25

モノを通じて欲しいのは、本当は体験のはず

iPod/iPhoneを使うようになって以来、イヤホンがやたら気になってる人は、結構多いはず。
私も実はそうなってしまった。
だいぶ前のことだが、iPod付属のイヤホンに業を煮やし、ShureのE4cを使うようになった。単に音がいいというより、静けさの中からきっちり立ち上がる音に、気持ちまで鎮まるように思えて、購入を決意した。それがきっかけだ(というより、そうさせたiPodがきっかけではあるが)。

Shureのイヤホンは2年保証になっている。使用中に断線などがあっても、購入2年以内(かつ正規代理店での購入)なら、交換してくれる。
この時に思ったこと。
「Shureは、すばらしいイヤホンを売るだけでなく、すばらしい音に心動かされる経験を2年保証するために、製品を売っているのだな」
iPod本体より高いイヤホンだ。そう思わなければ、やっていられない(苦笑)。
そして、いい経験を買えたと思ってもらうことで、次もShureを選んでもらおうとしているわけだ。

それと同じようなことを、再び考えさせられた。

***

それは、BOSEのこと。

BOSEの音の傾向そのものは、実はあまり好きではない。低音は確かによく響くが、ボワンと輪郭の甘い響きになって、ソリッドな音が映えない。(だから、まだ購入してはいない。)
ただ、圧迫感のあるカナル型イヤホンに抵抗を感じる時でも静けさを得ようと思えば、ノイズキャンセリング機構を持つヘッドホンを使うしかなく、その分野でBOSEが優位にあることは有名である。
(ゼンハイザーもいいノイズキャンセリングヘッドホンを出しているが、音漏れが盛大すぎて、外では使えない…)

BOSEのQuietComfortシリーズは、飛行機や地下鉄の爆音を消すのに役立つと言われる一方で、1年〜2年程度でイヤーマフ、カップなどがいかれてきて、修理する羽目に合う、という話を聞いた。
その際も有償で、1万円以上するのが通例だという(QC15の場合、そして、本体価格は4万円弱である)。

こういうのって、日本だと欠陥商品扱いになるかもしれない。
でも、BOSEはおそらく、頑丈に作ると、肌に接する製品としての心地よさをスポイルするから、わざわざこういう形で作っているのだろう。
そして、製品を購入することは、静けさと音楽を楽しむための初期投資であり、それに満足して継続するなら有償で製品全交換という名の「修理」を行うのだろう。

つまり、4万の初期投資と、1年半〜2年に一度ほどの定期投資で、爆音を抑えてストレスを軽減する「経験」を買うのだ。
飛行機で日常的に移動するエグゼクティブやアーティスト、俳優らは、その高額な収入からこのような投資をすることにそれほど躊躇しない、ということでもあるのだろう。彼らは、モノではなく、モノに付随する経験をこそ、買っているのだから。

***

本来、モノを買うというのは、それを通じて新しい経験をする機会を得たり、そこから新たなコミュニティや仲間を得たりすることだ。
経験のためのテコを買う、と言い換えてもいい。

現時点でその最大の例は、iPhoneだろう。
もちろん、Shureのコンシューマー向けイヤホン、BOSEのノイズキャンセリングヘッドホンなども、そういう例に入ってくる。

しかしそれは、高額商品に限られるわけでもない。
SONYのウォークマンは、椅子に座って聞くべき音楽を、最低限の環境だけにしてどこでも聞けるようにする、という逆転の発想で天下をとった。
そういう意味で、iPod/iPhoneより革命的でもあった。

ものづくりジャパン、などというのは、実はこういう発想からあえて遠ざかることを意味している。
では、「いい経験を売るなら、おもてなしジャパン!」などとやると、それはそれでまた、違う方向に行ってしまいそうだ。(日本の高名な旅館のおもてなしに、日本人だけでなく海外のVIPらが感動するのは、様々な客に適したサービスを出せるよう経営者・従業員が心得ているからであって、簡単にカタチに出来るものではないだろうから。)

多分、そういう標語では漏れてしまうような、一見ぶっきらぼうなようでいて、ちょっと馴染めば持ち主の行動を最高の状態に導いてくれる、そういうものこそが、いいモノなのではないか。(iPhoneはまさに、そういうことを目指しているモノではないか。)
ユーザに「単なる安楽」を提供するために自動化する、といった発想とは対極にあるはず。
だからこそ難しい、ともいえるわけだが。

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