フランクリンプランナーとGTD -- Opus Dominiを使い始めた理由
私は2001年頃からフランクリンプランナーを使ってきたが、GTDに出会って2007年に切り替えた。iPhoneが登場し、GTDアプリが出てきたことも大きい。
ただし、GTDを使いながらも、何となくフランクリンプランナー的な処理方法を馴染ませられないかと考えてきた。
フランクリンプランナーは、Time Questの著者ハイラム氏や、7つの習慣の著者コヴィー氏が開発・普及してきたもので、いわゆるシステム手帳になかった目標管理と実現のための項目やノウハウを加え、それにそった効率的な時間管理と処理を行うシステムになっている。
その利点や特徴は、使い方の解説もある公式ページに詳しいので、ここでいちいち繰り返すまでもないだろう。
その肝は、各自の価値観、人生における役割を考えた上で、ミッション・ステートメントを明記することにある。そこから必然的に発生する目標を明文化し、中期計画を策定した上で、より具体的なTo Do項目やスケジュール(イベント)にブレイクダウンしていくことにある。
(参考:価値観だのミッションだのは、書いてみるとずいぶんと恥ずかしい文章も出てくる。マンガによくある「極秘のポエムノートを読み上げられている」感じか。そういえば、内外の経営者には「その言葉はちょっと恥ずかしくありませんか、でも本気で信じているみたいね」というセリフに出会うことがあるが、それに相通じる、ともいえる。フランクリンプランナーが「宗教的」と揶揄される所以でもあるか。)
計画立案に結構時間がかかるように見えるが、ミッションなどは日次処理を進めながら書き加えていくものだし、日のタスク策定も慣れれば15分ほどでたてられるようになる。週次や月次の立案はもうちょっとかかるが、30〜60分ほどで済むようになる(慎重に当たることが起きた時はもう少し長くなることもあるが)。
きちんと立案した方が、集中力をもって事に当たれる、という考え方なので、ちょっとした時間に手帳を開いて確認する手間を惜しまなければいい、とも言える。
一方で、私がこのブログで触れてきたThingsやOmniFocusは、アレン氏の提唱するGTD (Getting Things Done) の概念を実装するものだ。
GTDについても、公式ページ(英語)やWikipediaを読むとよくわかるし、biz誠.IDのGTDまとめにも有益な情報がまとめられている。
GTDは、フランクリンプランナーのシステム普及の後に、提唱され、広まっていった。
優先度に沿うやり方では、優先度の低いタスクにはなかなか手がつかず、タスクの積み残しが発生しがちになる(2000年代前半、フランクリンプランナーを使った頃に遭遇した事態だった)。まして、IT化により業務が加速している現在、計画を立ててもその通りに実行しにくい。
さらに、あまりにトップダウンにこだわりすぎると、頭に中に優先度の高いことや、やりかけの仕事が常に頭に居座って、ストレスになる。
GTDはこのため、頭の中にある、やらなければならないこと、頼まなければならないこと、やりたいと思っていること、なかなか手がつかないこと、単に気になっていることなど、思いつくことは何でもすべてリストに書き出す。(アレン氏はほかに、引き出しや書類、書棚などの整理も一気に行うように書いているが、このことは今はおいておく。)
頭の中を一度外部記憶に吐き出し、頭の中でシクシクと思い出すことがない状態を作る。
そうやって脳を解放し、思考や判断で最高のパフォーマンスを引き出す。
また、リストにある項目から、処理に5分以内で済むものは、時間がとれれば片っ端からやってしまう。優先度にこだわって片付かない雑事が、これにより片付いていく。
一方で、いわゆる優先度の高い事柄も、ちゃんと時間をとるようスケジューリングする。
それが可能なのも、リストに頭の中をすべて吐き出して、そのリストさえ見れば、次に何をやるかわかっているからである、ということになる。
もう一つの特徴として、リストを作るとき、各項目にコンテクストを付与する。これは、職場や自宅、店や会合など、どこでやるか(あるいは移動中などどんな文脈でやるか)を示すもの。
優先度を割り振るために悩むくらいなら、処理時間とコンテクストを参考に、やれることを片っ端からやってしまう方がいい、という発想だ。
こうしてみると、フランクリンプランナーはトップダウン型であり、GTDはボトムアップ型である、と一応はいえる。
ただし、どちらも手帳やリストに大切なことをすべて書き出した上で、きちんと取り組めるような仕組みを作り上げる、という点は似ている。
だから、この両者が出会う地点に、うまく物事を進めて成功していける方法があるのではないか、といったことが言われたりする。
たとえば、biz誠.IDが2010年に紹介したMiddle Way Methodや、ライフハックに関するサイトとして有名なLifehacking.jpの2008年の記事などがある。
さらに、アレン氏自身も2007年あたりからGTDにおいて俯瞰する方法を取り入れている。高度5000m/ 4000m/ 3000m/ 2000m/ 1000mと5段階設けて、人生を貫く長い時間から中長期計画を経て、週次・日次のタスクまで降りてくるような視点である。
これはGTDの3冊目の著作で入ってきた概念であり、メジャーなアプリやツールで実装しているものは見かけない。ただ、リスト管理できるアプリであれば、ミッションやビジョンに関するリストを作り、タグやコンテキストに高度を追加する、といった工夫をすれば、運用可能だ。(もちろん、ミッションやビジョンなどは、ワープロやテキストエディタなど別のツールに記入してもいいだろう。)
つまり、フランクリンプランナーのような手帳型システムと、GTDのようなリスト管理型システムは、トップダウンとボトムアップの交点で元々出会う性質のものだ、とも言える。
ならば、GTDは元々道具にこだわらないのだから、フランクリンプランナーを使って、GTD的に運用することも不可能ではないはずだ。(逆に、GTDツールとカレンダーで、フランクリンプランナー的な運用も不可能ではないはず。)
ただ、アレン氏は「カレンダーは神聖なもの」として、それをゴチャゴチャにしないように、とアドバイスしている。つまり、日時がはっきりしているミーティングなどで、ダブルブッキングが起きないように記すだけにとどめて、通常の業務処理はリストにチェックをいれるだけにすることで、GTDの目指すすっきり感を保てる、ということである。
実はこれ、フランクリンプランナーを運用する上で、リフィルを見にくくしないコツにも使える。
こういうことを考えているうちに、フランクリンプランナーをデジタル化すればいいのではないかと思ったのだが、公式のオンラインプランナーは紙の再現にこだわりすぎて、やや窮屈そうに見える。
そんな中、Opus DominiやPlan & Noteのように、iOSアプリにフランクリンプランナーのシステムを採り入れたものが出てきた。柔軟な運用が可能な上、iPadの10インチ画面ならば非常に見やすい。
そこで、電子化されたフランクリンプランナーに戻ってみた、ということである。
もう一つ、私はGTDツールを使っている時、思ったほどコンテキストを見ないのだ。Todayと前後を見ながら(OmniFocusの予測機能)、時間に沿って仕事量を調整する。コンテクストを見忘れても、やり忘れることはあまりない(これは人それぞれな部分だと思う)。
逆に、時間感覚がわかるツールで示してくれた方が、ものごとを把握しやすい。私にとっては、時間について優先的に記すツールの方がストレスが少ない、と言えるし、リスト管理型アプリの弱点と感じていた、とも言える。
OmniFocusは予測機能で一週間のタスクを見渡せるため、使ってきた。ただし、フランクリンプランナーが電子化されるなら、時間に関する視点はずっと有利になる。
これが、Opus Dominiを使い始めた最大の理由だ。
公式のフランクリンプランナー側がどう捉えているのかはわからないが、Opus Dominiを訴えたりせず、むしろ追認してくれるくらいだといいな、と思っている。
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コメント
公開後、少し文言を直しましたが、意味は変えていません。
投稿: KenKen | 2012.09.10 23:37