映画・テレビ

2010.02.02

時間とコンテンツ、そしてサポートする機器

BD/HDDレコーダーを購入した。
HDD(ハードディスク)を内蔵してテレビ番組やハンディカムの動画を録画し、それをBD(ブルーレイ・ディスク)に書き出せる代物。
画質・音質や、録画と編集の使い勝手、記録したHDデータの互換性の広さ等から、SONY製品を選んだ。

テレビにそれほど興味はなかったので、何も購入しないのが自然な流れと思ってきた。
それでもたまに観るものがあるし、地デジ化はまだだが、BSが受信できる環境に移った。音楽を(クラシック演奏会なども)結構流しているようだし、観てみたいアニメや映画もある。
iTunes/iPodで、音楽をデジタル化して気楽に聴ける恩恵はよくわかっているし、その動画版を一度くらいは使ってみてもいいだろうと、購入に踏み切った。

いざ使ってみれば、定期放映する番組は録画を(番組表データを確認しながら)自動化してくれるし、番組表からテーマ別に抜き出して予約することもできる。
少しの間、視聴を続けてみると、想像よりおもしろい番組に当たることも、わかった。
それに、最初から観られない場合も、録画しておけば追いかけ再生が出来る。つまらなければHDDから消せばいい。テープの有無を確認しなくていいので、気楽に録れる。再生も気楽(HDDに入っていれば特に)。
何より、放送側の時間指定に縛られなくても済むようになる。
いまさらながらだが、レコーダーを活用するなら、テレビは我が家にあっていい、という結論に達した。

***

活用し始めると、保存版をBDやDVDに焼いても、HDDから簡単に消さないで運用したいと感じるようになってきた。
Mac/PCのiTunesを使うように、HDDにためたデータを、好きな時に参照できるほうがありがたいと思うようになるから。

ただし、動画は容量が大きく、500GBあっても意外に空き容量を気にすることになる。
しかも、観ることができないまま、たまっていく動画もある。観ないで消したとよく聞くが、このことだったのか、と。

その意味では、東芝の新しいテレビCELL REGZAが実装したように、すべての番組を一気に録画して、好きな時に番組表から観られるようにしておき、保存版だけは別領域にコピーする、というのも一つのあり方かもしれない。
そこまでして、是が非でも観たいとまでは思わない自分がいるけれどね。でも、そういう気持ちになる人がいるのも理解は出来る。

一方で、レコーダーがこれほど盛んなのは日本くらいであって、多くの国で盛んなのはBD/DVDプレイヤー、という事実が気にかかる。

つまり、日本のように几帳面に録画管理をしない文化の人々は、BDやDVDを購入する、ということ。
そのためか、日本よりいくらか安い販売価格が設定されていることが多い。たとえば米国は、たいてい数割は安い(アニメなどは日本の半額以下になっていることもある)。

***

もしかして、

セル版は高いからユーザーは買わない→ユーザーはテレビ放映を録画する→セル版が売れないからメーカーは高値を維持する→テレビ録画にこだわる人が減らない……

という循環になってるのかどうか。

動画は制作に携わる人々が非常に多く、使用権や販売権など権利関係が複雑だとよく言われている。それを解消しようと話を進めているが、なかなか難しいと報道されていることも。劣化しないコピーが可能になったためソフトが売れなくなった、という意見があることも。
けれど、せっかくレコーダーのような高機能機器が市場を形成している国なのだから、もう一歩踏み込んで、コンテンツをユーザが使いやすくする方向にならんもんかなぁ。

映画やドラマやアニメも、自分がメインで使うデバイスのHDDやメモリに「気楽に」コピーして視聴できれば、多くの人がもっと積極的に楽しもうとするし、パイが再び大きくなれば、そこにお金を落とす人も増えてくると思うんだが。
3Dより先に、楽に運用できる体制を整えるほうが、人々が離れなくなるんじゃないかと思えてならない。

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2009.07.20

NHK「マネー資本主義」最終回

たまたま前日、第4回の金融工学特集を見た。流れで、最終回も見た。

一流の食材を集めたのに、出てきたのは一番つまんない料理という残念感。

NHKのこの手の連続番組は、途中まではきちんとインタビューなどを積み上げて、そこそこおもしろく見せてくれるのに、最終回はどうしてこうもつまんなくなるのか。

せっかく宇沢先生にインタビューするなら、10分以上使って流してもいいではないか。
せっかくシュミットにインタビューするなら、そんなに一般的すぎる質問をせず、もう少し突っ込んだことを聞いてもいいではないか。
せっかくスティグリッツに話を聞けるなら、もっと論理的な話を聞いてもいいではないか。

最後に、ゲスト3名に今後は「××資本主義」とするのがいいか、というコピー作りをやらせていたけど。
こんなコピーで目指す方向がわかるような問題でないことは、出演者も重々承知だろうし、あえて安易にわからせようとする方向性はむしろ理解に苦しむ。(構成がよくなかったとも思う。)

最終回もこれまで通り、インタビューと事実を積み上げながら、解決が難しい問題について、どのような動きがあるかを伝える、そこにむしろ集中するだけでよかった。
いや、ほんとにもったいない。

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2009.05.20

だいぶ経ったけど劇場版エウレカセブン

2009年ゴールデンウィーク公開で、見てからだいぶ経ったけど。
劇場版「交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい」を見て来たのだった。

テレビシリーズは2005年春〜2006年春の1年続いたもの。放映終了直後に始まった深夜の再放送で、久々にテレビアニメを見ることになった。これについては、こちらこちらで触れた。

劇場版は、テレビシリーズとは時代も背景も設定も変えた、まったく新しい2時間のラブストーリーに生まれ変わっていた。
予算の限界に挑戦するようなすばらしいアクションシーンと、徹頭徹尾テンションの高い、とても変わった115分。
監督の映像への生理感覚はとてもいい、冒頭から引き込まれる。


2時間ないのだから、テレビの時のような、複雑な感情の積み重ねは無理だと割り切った上で構成している。
台詞があまりにも多い、そこも変わっているけど、不思議にずっと見ていられる。設定でちょっと「?」となっても、勢いにかっさらわれるというか。
いや、見る価値はじゅうぶん以上にあります。

劇場の入りがよいので、モーニングとレイトショーだけだったのを、回数を増やして上映してますが、そもそも上映館が少ない。しかも、22日金曜のテアトル新宿が最終日みたいだ。その代わりなのか、来月にはBD/DVDが発売される。

相変わらずハマる人はハマる、一風変わった、そしておもしろい作品だと思う。

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2009.01.31

電脳コイルをやっと観た

少し気温が上がったと思ったら大雨、その後は冷えてきた。忙しい気温だ。まだ立春前だが、今年は少し気が早いのか?

アニメ監督の鳥海永行氏が逝去された。67歳。
記事はアサヒ・コム(1/25)などにあり。
「科学忍者隊ガッチャマン」を子供の頃に観たし、「ニルスのふしぎな旅」など数多くの作品を送り出した方として有名。
タツノコプロ→すたじおピエロの後続世代を育てていったことも記憶されるべきだろう。たとえば、押井守。
現在の平均寿命から考えれば早い死だろうが、労働集約型産業であるテレビアニメの勃興期はたいへんな作業環境だったはずだ。
合掌。

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その報道のあった週に、私はあるテレビアニメのDVDを観ていた。
磯光雄氏の初監督作品「電脳コイル」。
徳間書店NHKのページがある。)

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2008.10.26

プロフェッショナルを観た(2):柳家小三治

前回に続き、「プロフェッショナル 仕事の流儀」の話。
100回記念の60分拡大版(通常は45分)は、柳家小三治(以下は小三治として敬称略いたします、他の方も敬省略)。
放映は10/14および10/20深夜(再放送)だったから、だいぶ前。その間、数回見た。

この番組は、同じフォーマットで番組を進行するだけでなく、必ず同じ質問をぶつけて、ゲストから(言葉にすることが難しい部分まであえて)話すように仕向ける(少なくとも私は、そのように受け止めている)。
即座にまじめに答える方もいらっしゃれば、微妙な表情をしつつ間をおき、少しずつ言葉を紡いでいく方もいらっしゃる。このあたりの間合い、やりとりそのものが、実は言葉に劣らぬほど重要だと思う。繰り返されるうちに、視聴者の側にもその受け止め方が、蓄積されていく。
繰り返すこと、継続することは大事であり、それは学習の基礎でもあることは心理学でも脳科学でも生物学でも言われること(もっとも、学習が成立する瞬間は一回であるとも言われており、それまでは試行錯誤、その後は忘れないようにするため、と考えることも出来る)。それを実践しているようなものだろう。

だけど、小三治の回は、そんなものをひっくり返してしまう凄みがあった。

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2008.10.24

プロフェッショナルを観た(1):脳活用法スペシャル

プロフェッショナル 仕事の流儀」(NHK)は、様々な分野のプロフェッショナルの現場を取材、そして脳科学者の茂木健一郎氏、アナウンサーの住吉美紀氏が、プロの仕事ぶりについて尋ねる形式のドキュメント番組(以下、敬称略いたします)。
などと紹介するまでもなく、ご存知の方が圧倒的に多いか。
毎回ではないが、思い出すと観る。

この番組、質問があまりに素朴で、上から目線で失礼な聞き方だと、立腹している人も時々いるが、これは意図的にやっているのだと思う。
たとえば心理学的なインタビューをする場合、できるだけ同じような条件で質問をして、その結果を(言葉だけでなく、表情や動作の変化も踏まえながら)分析する。そうやって定性的なデータを収集することは少なからずある。
テレビ番組だから学問的な統制をとるのは不可能だとしても、脳科学者である茂木がスタッフとともに、番組構成と質問のパターンを考え、ゆるい形ではあっても、定性的なデータ集めを行っているのではないか。
だから、あえて素朴な(普通そんなこと尋ねたら答えようもないし失礼だよ、というような)質問をパターンとして発し、ただしあまり解釈を加えず、隣の住吉や視聴者とともに感じていく形をとっているように見受ける。
というより、そうやって視聴者自らが感じ・考えてもらえることを、視聴者を期待し、また信用しているのかもしれない。

めでたく100回を迎えたが、その時のゲストは柳家小三治。
この回はすごかった。笑って笑って、そこから金言がいくつもこぼれてきた。
ふだんテレビをつけない私だが、この時ばかりは本当に観てよかったと、放映を思い出したことに感謝したくらい。
これはまた次に書くとして、本日はその次に放映された100回記念「プロに学べ! 脳活用法スペシャル」について。

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2008.09.17

因縁の二人、宮崎駿と押井守

「スカイ・クロラ」(押井守監督)を観たことは触れたけど、先日やっと「崖の上のポニョ」(宮崎駿監督)も観てきた。

両作品ともヴェネツィア映画祭の公式招待作品となったが、賞はとれなかった(世間が騒いだのは、日本びいきのヴェンダーズ監督が映画祭の委員長だったからだろう)。
けれど、「ポニョ」は歓びをもって迎えられたという記事がいくつも出ていたし、「スカイ・クロラ」も注目されていたそうだ(その割には、エンドロールで席を立つ人も多かった、という記事もあったけれど)。

1984年、「風の谷のナウシカ」(宮崎)と「うる星☆やつら 2 ビューティフル・ドリーマー」(押井)でそれぞれ注目を浴びた二人は、20年以上にわたって傑作を何本もものにしてきた。日本のアニメが世界中の映画界から注目を浴びるようになったきっかけの一端は、間違いなくこの二人にもある。
とはいえ、この二人、どちらかといえば、アニメという世界では鬼っ子なのだと思う。いわゆるフツーの連続テレビアニメ、ことにラブコメだの萌えだのロボだの、マンガ的パターンが入ったものは作らない(押井は「パトレイバー」までは作っていたけれど、これもどちらかといえばフツーじゃないし)。
映画館での観賞を強く意識した映像表現と音楽で、宮崎は圧倒的な生命力を(せめぎ合いも含めて)肯定し、押井は日常生活のループからふいに割ける瞬間にこだわる。

たとえば、海外のオタク達は日本同様に、日本のテレビアニメやテレビゲームそのものが大好きだ。宮崎や押井も観るが、それ以上にフツーのテレビアニメ(に観られるマンガ的パターン)も喜んで観る。
だが、宮崎や押井は、日本のフツーのアニメを拒絶したところで成立する世界を提供し続けている。映像作品としての問題意識の置き所であって、どちらがえらいとかいう話ではないが、この二人の作品に触れれば、独特の時間が流れていくことはまず間違いない。

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[以下、少しネタバレあるので、未見の方はご注意を。]

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2007.07.03

ETV特集・吉田秀和

先日放映された「ETV特集・吉田秀和」を、録画で見た。

吉田秀和氏は、90歳を超える現役の音楽評論家。終戦直後から一貫してクラシック音楽について書き、語り、教育に関わっている。
1950年代の二十世紀音楽研究所設立は、おそらく戦後音楽史の一つのエポックだろう(私はリアルタイム世代ではないが、様々な前衛音楽創作活動を横断する場、初演を行う場があったことは重要であり、その精神は、後に音楽祭で現代音楽が多数上演されることに引き継がれていると感じる)。
1980年代以降は美術評論も展開。最近は水戸芸術館の館長も務めている。昨年、文化勲章を受章。

個人的には、中原中也と東大で出会って以来、友人だったこと、鎌倉に暮らす鎌倉文人の一人であり、小林秀雄、大岡昇平らと交流があった、といったことを思う。
つまり、第2次大戦前夜から現代に至る、近現代文化史と音楽の生き証人である。政治家なら後藤田正晴氏、宮沢喜一氏らのような存在でもあるか。

そんな氏の軌跡を映像とナレーションで追いながら、作家・堀江敏幸氏によるインタビューを挟む構成。

マイクに対して、真摯に、しかし軽やかに応える姿は相変わらずであり、この方は老いてますます明るく研ぎ澄まされているのかと驚く。(生と死に向き合い、芸術について思考してきた、氏ならではだ。)

番組自体は、これまでの名文・名台詞の集約もあって、見応えじゅうぶん。

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2007.03.28

ものわかりがよすぎるのもモンダイだ

NHKの放映する「プロフェッショナル」は、つまんないわけじゃないんだが、どうにも座り心地が悪い。
わかりやすい結論、一言で言い表せること、おいしい映像に、こだわりすぎているんじゃないか。

もしも世の中がそういうものばかりを求めているとしたら。
予備校で習う「ここがポイント!」だけですべてをすり抜けられると思ってる人間が増えすぎてるってことか。
それが悪いわけじゃない。
ただ、「難しいことを簡単に伝えられる人が一番わかってる」のは真実の一面であるものの、「すべての難しいことは簡単に伝えられるし一言で要約できる」と信じ込むのも間違いであるということ、ただそれだけだ。
プロフェッショナルという言葉に宿るコトは、そこにこそ触れるはずだろう。

その意味で、今まで2回だけ放映されたトーク・スペシャルはまだ見ごたえがあるが、通常放送はどうも食い足りないまま終わってしまう。
ホントーにあんな内容でいいのか、茂木健一郎?!
(呼び捨てかよ、おい。)

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2006.10.13

日本のメディア芸術100選

文化庁主催のメディア芸術祭10周年を記念して、「日本のメディア芸術100選」の投票が行われ、10月に結果が発表された。
結果はこちらのサイトを参照のこと。

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