サイエンス系

2007.02.23

チューリング賞、最適化研究のアレン氏

コンピュータサイエンスの学会、ACMが選ぶチューリング賞。
2006年度は、Frances E. Allen氏の栄誉となった。
(チューリング賞については、かつてアラン・ケイ氏が受賞した際のエントリーで少し触れた。)

ACMのプレスリリース(2/21)

インプレスのInternet Watchの記事(2/22)

ちなみに、タイトルに「初の女性受賞者」とは入れなかった。
ハーヴァード大学の新学長ファウスト氏が「私はハーバードの女性学長ではなく、ハーバードの学長だ」と語っているし(アサヒ・コム、2/13)、ヒラリー・クリントン氏も大統領の有力候補だしね。

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2007.02.09

歌うネアンデルタール

昨年、発刊された5月末頃に購入したにもかかわらず、最初の2章くらいで中断していた書物があった。今年に入ってから再開し、読了。
スティーブン・ミズン「歌うネアンデルタール 音楽と言語から見るヒトの進化」早川書房(原著:Steven Mithen, 2005, "The Singing Neandertals: The Origin of Music, Language, Mind and Body")。

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2004.04.22

アラン・ケイ博士、チューリング賞に輝く

なんかかんか、ニュースはあるもんだね。
アラン・ケイが2003年のチューリング賞を受賞、という発表があった。以下に情報源を。

アラン・ケイ博士、“PC業界のノーベル賞”「チューリング賞」受賞(インプレス、Internet Watch)
SqueakLandのニュース

しかし、インプレスさん、いくらなんでも“PC業界のノーベル賞”はないんじゃありませんか? PC業界というと、ひどく矮小なイメージになってしまう。もっと幅広く、しかもアカデミック寄りだ。(一応、記事本文にはそのように書いてはあるけど、見出しのイメージは重要なんじゃないでしょうか。)
チューリング賞は、チューリング賞を出すことを目的とする財団があるわけじゃない。ACM (Association for Computing Machinery)という、コンピューター科学に関する世界最初のアソシエーション、つまり、学会だ。多くのコンピュータ関連の研究者は、ここを含めたいくつかの学会に所属する。重要な研究と貢献をしたとみなされる人を表彰し、賞金を出してより研究に励むように、というもの。ちなみに、その年に重要な研究をしたというのではなく、それまでの研究成果が大きく着目され、「あれがあったから、いまこうなっている」とはっきりしたものが対象になっていることが多いかな。
フォン・ノイマンと同時代人にして、計算理論から人工知能問題まで幅広く研究を続けたアラン・チューリングの名にちなむ賞だけに、ACMが出す最高の賞。そしてコンピュータ科学に関する学会としても最高レベルの賞と言われる。

これまでの受賞者のリストを見てみよう。
1971年のジョン・マッカーシー。人工知能学会を立ち上げて、AIブームを巻き起こした。
1972年のエズガー・ダイクストラ。アルゴリズムの専門家であり、コンピュータ言語ALGOLにより、構造化プログラミングを提唱した。
1974年のドナルド・クヌース。アルゴリズムや計算理論の詳細を究めた大著で有名。また、組版システムTeXの開発者。
1977年のジョン・バッカス。世界最初の高水準コンピュータ言語FORTRANを開発。また、バッカス-ナウア記法の発明により、コンピュータ言語の定式化にも貢献。
1981年のエドガー・コッド。データベースの先駆的研究者。RDBの概念提唱をはじめ、実装に至る多くの研究テーマをもたらした。
1983年のケン・トンプソン、1984年のデニス・リッチー。UNIXオペレーティングシステムの、最初期の研究開発者。もちろん、C言語など、重要な開発も。
1984年のニコラウス・ヴィルト。コンピュータ言語ALGOLの研究を発展させ、Pascalを開発。アルゴリズムとデータ構造の研究を押し進めたことでも有名。
1987年のジョン・コック。RISCコンピュータに関して、CPU命令セット、コンパイラなどを含む広範な研究を行った。
1988年、アイヴァン・サザランド。画面上で画像をどう扱い、どう描くかというコンピュータグラフィックの基礎を確立した。スケッチパッドという最初のグラフィカルなコンピュータは、1962年の発表、後続の研究に莫大な影響を与えた。
1997年、ダグラス・エンゲルバート。マウスを発明。1968年、マウスとキーボード、画面によるインタラクティヴなコンピュータを開発し、デモ。ヴィジョンを提示した。
2001年、オレ・ヨハン・ダールとクリスティン・ニガード。1960年代に最初のオブジェクト指向言語Simula IとSimula 67を開発。

一般の人々にインパクトを与える研究をちょっと抜き出しても、これだけある。パソコンというより、コンピュータ全般の発展に貢献した人が選ばれていることが想像できるだろう。

アラン・ケイが何をしたかはもう、先の記事にも軽く触れてあるし、検索すればそれこそズラーッと出てくるはずだ(日本語でも)。
多くの場合、Dynabookという現在のノートパソコンに直接つらなるようなコンセプトを提示したことが有名だ。ただし、コンピュータ科学という面では、Dynabookの理想を1970年代の技術で構成して見せたAltoで、ヴィジョンを見える形で提示したこと。そこに搭載したオブジェクト指向言語Smalltalkの仕様を決定したことで有名。
サザランドのグラフィカルなコンピュータという概念、エンゲルバートの発明したマウス、ダールとニガードによるオブジェクト指向言語(というよりシミュレーション言語と呼ぶ方が正確か)といった先行する研究を膨らませて、「紙のように使えるコンピュータ」「それを使って教育できるコンピュータ」というヴィジョンに結実させ、実装例を示した。
それはアップルのLisa、MacintoshというGUIをもったパソコンに宿った。そうして、いまのWindows時代がある。

だけど、そういうものは実は、アラン・ケイの目指した世界とは違う。ましてや、ビジネスに役立ついまのコンピュータでは得られないものを、本当は考えていた。Smalltalkとは、利用環境と開発環境が渾然一体に溶け合っていて、人が考えた事をどうコンピュータ上で見える形にするかに、最大の焦点があった。掛け違えたボタンを、どう考えるべきか。
アラン・ケイはその後、Smalltalk-80に基づきつつ、それを大幅に拡張し、その後の様々な研究成果なども見つつ、自身の新しい概念も含めて、Squeakという世界を作り上げている。
これは、言語であり、実行環境でもある。それまでの反省もふまえて、開発環境として使わない人でも役立ち、楽しめるように設計され直している。しかもOSやマシンに出来るだけ依存しないように設計されてもいる。移植されれば、どんなマシンの上でも同じプログラムが、同じように動く環境でもある(Windows、Macintosh、各種UNIX、WindowsCE、Zaurusなど)。昨年は和書も出て、話題になった。
マックに影響を与えた、ということはもう一々言わんでもいいだろう。彼が1970年代に考えたことを実現できるだけのハードウェアやネットワークが、やっと揃ってきた。これから彼の理想がどう発展していくかも、大事なことだと思う。
(そうは言っても、現実の生活では普通にMac OS Xユーザをやってる自分だったりする。)

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2004.03.05

marsroverとそれに関わる人と

もはや全然タイムリーじゃないですけど、自分でエントリーを起こしたので、フォローアップを。
ここでは朝日新聞の報道を貼っておこう。
もちろん本家のNASAのJPL (Jet Propulsion Laboratory)のページにあるニュースリリースもどうぞ。

実は「きわめて重大な発表を行う」と報道されていたので、一瞬アミノ酸でも見つかったならすごいと考えたが、それはないとすぐに思い直した。今回は生命のゆりかごとなる水がかつて大量に存在していたかどうかを確認するものだったし。

しかし、オポチュニティとスピリットの2機が着陸したけど、両方が成功するとまでは思っていなかったので、バックアップとして2機飛ばしたという。JPL/NASAのmarsroverプロジェクトに深く関わったJames Gosling(Javaの生みの親、Sun Fellowにしてツール開発部門のCTO)が語るビデオを、Java Technology Conference 2004(JTC 2004)で見た時に、そう話していたのだ。
ビデオ自体は、JTC 2004の来場者へのメッセージを、Sunのエヴァンジェリストが質問しながら引き出す趣向のもの。Javaの話が主眼なのだが、関連する話としてこうした話題も出て来たのだ。そこで触れられていた、興味深かったこと。
彼自身はこのプロジェクトに3年くらい関わってきたそうだが、宇宙関係の仕事は短くて5年、普通10年くらいのスパンで行う。コンピュータ業界では3年でも長いくらいだし、考えにくいことだろう、と語りかける。
そして、成功するかどうかの瀬戸際は5分。大気圏突入に成功して無事に抜けられるかどうかの時間。ここを通過すれば、着陸までの姿勢制御はむしろ楽なのだそうだ。
つまり、5分のために10年という人生のある期間を当てる(10年あれば小学生は大人になってしまうし、decadeという単語があるくらいだ)。打ち上げが近づいた頃の、サイエンティスト達の緊張はたいへんなもので、みんなナーヴァスになっている。James Goslingが「JPL/NASAの連中はみんなおそろしく頭が切れる」という。そういう人たちが、である。
それだけに、成功した時のみんなの表情は一生忘れられないものだ、と話していた。(というか、それを語るJamesの表情も、忘れられないものだった。)

また、最後にこんなことを言っていた。「コンピュータの場合は本番同様のテストをするけど、宇宙開発の場合はテストはない、シミュレーションしか出来ない、あとはぶっつけ本番だ!」と。
日本やEUの火星探索機は2つとも失敗した。お金をかけているとは言え、今回のNASAはまずまず上首尾にことが運んでいるのかもしれない。

まぁ他にもいろいろ興味深い話が出ていたのだが、James Goslingのこういう話しぶりは、Javaというコンピュータ技術のコミュニティの、ある側面を象徴しているかもしれない。陽性で、熱烈で、ユーモア豊かで、しかも真摯な時への心配りがあるとでもいうか。
Javaのすべてがすごいとは言わない。どんな技術も一長一短があるしね。ただ、こういう人柄が醸し出す雰囲気と、それがもたらす方向性は、絶対にある。Linuxコミュニティにも、Linusの人柄が投影されているし。
日本だとそれは、村井純とインターネット、またTRONプロジェクトと坂村健、ということになるのかな。
Linuxは少し違うけど、こういう人たちのほぼ全員に共通するのは、技術が生活の中に入っていく時に何が起きるか、そしてその際に問題が生じるなら、科学でどのように解決できるか、という視点を持ち続けていることだろうか。というか、そういう人がコミュニティのリーダーになった場合に、強いんだろうな、きっと。

おぉ、最後は火星じゃなく、科学や技術のコミュニティの話になってしまったね。

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2004.03.03

3/3の早朝に火星探索の成果?

ところで、もうすぐ(3/3のam4:00に)NASAから火星に関する重大発表があるというけど、なんなんだろうね。朝にははっきりしてるんだけど。

ちなみに、maestroというサイトで、MarsRoverのカメラがとらえた映像を見ることができる。結構有名なサイトなんでいまさらって感じもあるのだが、知らない人もいるようなので。
アプリケーションをダウンロードして、起動させる。あとはそれを操作すればいいだけ。英語だけど、ひどく難しくはなかった(はず…)。ブロードバンド(ADSLやCATV、FTTHなど)の方々は、ダウンロードも通信料もおそらくクリアできるので、気になる向きはどうぞ。
これ、Javaアプリケーション。Javaアプレットの重さを思い出した方へ、まぁ動作が軽いとは言えないけど、また違う世界なので、試してみる価値はあり。古いマシンだと重く感じるだろうけど、ここ1年くらいのマシンならまぁ大丈夫でしょうか。CPU以上に3Dデータを扱うときが一番重い。3Dグラフィック・アクセラレータを強く推奨する、と書いてあるしね。
実は私の家のマシンだと、思いっきり速いグラフィック・アクセラレータがなくて、時間もないんですべての機能を試していない。うぅむ、こんなんで紹介していいのか。でもまぁ、興味がある方なら、おもしろがれるでしょ。

MarsRoverはJavaで制御され、管制システムも巨大なJavaアプリケーション。まだ完全にミッションが終わっていないけど、このまま進めば成功だろう。Javaって、意外に見えないところで動いてるんだよ。

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